Amazonならではな電子ブックリーダー、Kindle


米国の話ですが、AmazonからKindleという電子ブックリーダーが発売になっています。

「ペーパーバックより軽い」:アマゾン、電子ブックリーダ「Kindle」発表:ニュース - CNET Japan
Amazonの電子ブックリーダーKindle公開、399ドル - Engadget Japanese

Amazon.com: Kindle: Amazon's New Wireless Reading Device: Kindle Store


今まで、幾度となく発売されてはいたものの、ヒット商品が出ることがなかった電子ブックリーダー。今回、Amazonが手がけているということで、いままでになかった電子ブックリーダーになってるようです。

ざっとあちこちの記事を見て分かったKindleの特徴は以下のような点。

  • 6インチ800x600のE Inkディスプレイ(バックライトなし)
  • EV-DOデータ通信でコンテンツを入手可能。通信料はAmazon持ち。
  • 内蔵フラッシュメモリSDメモリカードスロット
  • Amazon内のKindle storeにてコンテンツを入手可能、現在9万タイトル以上。
  • 新聞やブログのフィードも購読することができる(有料)
  • 重さは292g

ハードとしての面白さ


このKindleはいろんな点で興味深いんですが、ハード的に見たときの特徴としては、E Inkディスプレイを採用しているのと、EV-DOデータ通信でコンテンツを入手可能という2点でしょうか。


E Inkディスプレイってのは、「消費電力が低い」「視認性が高い(視野角が広い)」「電源を切っても表示がそのまま残る」などの特徴を持つディスプレイで、電子ブックリーダーには非常に向いているものです。反射型なので、普通の液晶が苦手とする明るい日中の屋外などでも問題なく見ることができます。

欠点としては、モノクロだってことと、バックライトがないから暗いところでは見づらい?といったところでしょうか。まぁ、電子ブックリーダーという商品なので、特に大きな問題のない部分なのかもしれません。


もう一つの特徴のEV-DOデータ通信でコンテンツを入手可能ってのは、3Gデータ通信をキャリア(Sprint)との契約なしに無料で利用してコンテンツを入手することが可能ってことです。
Amazonの電子本リーダーKindle:3Gデータ通信は無料、契約不要 - Engadget Japanese

PCなどを使わずに、Kindle本体だけでしかも通信会社との契約や料金なしにAmazonからコンテンツをダウンロードできるという代物。これはすごい。通信料金は全てAmazonが負担してるそうです。まぁ、その分コンテンツの料金に含まれてるのでしょうが、ユーザー側に無駄な手間をかけさせることなくコンテンツ入手方法を提供するというのは素晴らしい。

データ量が少ない電子ブックだからこそ可能な方法だったのかもしれないですね。


電子ブックリーダーに重要なコンテンツ


多くの電子ブックリーダーが発売されたもののヒットせずに人知れず消えていった大きな原因のコンテンツの提供状況は以下のような感じ。

紙本ではハードカバーの新刊は一冊$9.99。当初8万8000冊を用意。NY Timesベストセラーリスト112冊のうち100冊を含む。
全国紙・ローカル紙含む新聞は月$5.99から$14.99の定額制。雑誌は月$1.25から$3.49。2週間の無料お試し期間付き。
新聞・雑誌のほかBlogの購読も可能。ただし無料で読めるはずのBlogもなぜか$0.99。ここからコンテンツ提供者に還元される(つまりサイトにとっては広告以外に電子版購読料の収入が得られる方法)。

すでに多くの書籍を取り扱っているAmazonだからこそ、これだけの量のコンテンツを用意できるって部分はありそうですね。とにかく読みたいコンテンツがないことにはただのガラクタですから、コンテンツを如何に多く提供できるかってのは電子ブックリーダーとして重要な部分。

また、新聞や雑誌、ブログのフィードを講読できるってのも目新しい。新聞や雑誌のデータが発売日に自動的にダウンロードされているってのはとても便利そう。紙媒体の新聞や雑誌はどんどん売り上げが減っていますが、こうやって電子データでの販売に移行することが成功したら今後の見通しが明るくなるかもしれません。

ただ、新聞ならまだモノクロでも納得いきますが、雑誌となると写真を見たいってのが大きいですからやっぱりカラーディスプレイが欲しいところ。



ブログの購読も可能で、収益はコンテンツ提供者に還元されるとありますが、ここは新しいガジェットに飛びつく層とかぶるであろう
ネットヘビーユーザーからの反応は冷ややかなものになりそう。普通にPCや携帯でみるときは無料なフィードがなぜKindleになると有料に?!という意識がありそう。

Amazonが負担している通信料分や、コンテンツ提供者への還元をどれだけ好意的に受け止めるかにかかってそう。もしくは、そんな細かいことを気にしないユーザー(ブログを雑誌や新聞と同列と捉えるユーザー)が増加すると、新聞や雑誌に加えた新しいメディアとしてブログが認められたってことになるのかも。

購読という形だと、それなりな内容を提供することが求められるようになりそうで、個人ブログってよりかは商業的ブログって感じになるんですかね? どんなブログのフィードが提供されているかが気になります。


電子ブックリーダーの進む先


電子ブックリーダーの便利なところを考えてみると、「コンテンツを省スペースで大量に持ち運べる」「紙の本と違って、欄外参照を見やすく表示したり、リンクを取り入れて目次から各章に飛んだり、文章内で他のページや章を参照してる部分からすぐにその部分に飛べる」「辞書などを搭載すれば、手軽に辞書を引きながら読める」という紙媒体の本では不可能・困難な部分が解消されるってところにあると思うのですが、この方向性をどんどんと突き進めていくと、結局はインターネットに接続してWikipediaを参照できるとか(Kindleで可能)、本文内で参照されている他の本(コンテンツ)を手軽に購入できるとか、将来的には写真や映像、音声も参照できるようになる、とか、単なる電子ブックリーダーというよりは、マルチメディアリーダー的な方向性に進むことが予想されます。

そうなると、当然のようにブラウザが搭載されることが考えられて、Kindleにもブラウザが搭載されているそうですが、ディスプレイがモノクロですし、ネットワーク的かハードウェアかソフトウェアかどこが原因かは分かりませんが、ブラウジングはそれほど快適ではないようです。



進む先を考えると、iPod touchのような携帯マルチメディアプレーヤーが電子ブックリーダーを搭載するなんて流れもありそう。AppleはすでにiTunesStoreで音楽や映像を売ってますから、そこに電子ブックも並べる、と。

この手のデバイスで重要なのは、コンテンツを簡単に入手できる体制を整えることで、より多くのコンテンツを販売する場所を提供すること、より多くのフォーマットの再生を可能にすること、が重要そうで、すでに多くのフォーマットが再生可能なiPodなら、電子ブックもその一つとして採用することで、より多くのユーザーに利用してもらえる土壌を簡単に作ることが可能そうです。



たぶん10年先とかの未来になったら、多くのコンテンツ(電子ブック、音楽、映像、ゲームなど)が当たり前のようにネット配信され、手軽に手元のモバイルデバイスで楽しめるような環境になってるのでしょうが、そこに至るまでに乗り越えなければならない問題点は山ほどあって、それらがどういう風に乗り越えられていくのかは興味あるところです。