アニメコンテンツの品質と入手手段のねじれた関係


アニメを見ようと思ったら、どんな方法があって、それぞれの品質、値段、利便性がどうなのかってのを比較してみる。

  • 品質

Blu-ray, HD DVD, デジタル放送>DVD, 高画質動画共有サイトStage6など)>アナログ放送, 有料ネット配信, 中画質動画共有サイトニコニコ動画など)>低画質動画共有サイトYoutubeなど)
動画共有サイトの画質はだんだん向上してきているので、上方へとずれていくことが予想される。有料ネット配信はどのサービスも総じて品質は低い。

  • 利便性

動画共有サイトBlu-ray, HD DVD, DVD>テレビ放送>有料ネット配信
これはあくまでネットを十分活用できる場合の話。いつでも視聴可能で、シリーズだったり類似動画だったりを簡単に検索やタグなどで探せる動画共有サイトが一番利便性が高い。プレーヤーを必要とし、コンテンツごとにメディアの交換が必要な光メディアがそれに続き、見る時間が制約されるテレビ放送がそれに続くが、録画環境が整っているなら利便性は高いかも。でも、地域による放映格差もあるので、やっぱりここか。ネット配信は動画共有サイトと同じネット媒体での動画閲覧手段にも関わらず、再生環境の制約、課金の手間、閲覧期間の縛りなどで利便性は最低ランクという認識。

  • 値段

Blu-ray, HD DVD>DVD>>>有料ネット配信, レンタルDVD>>>(超えられない壁:無料→)>>>動画共有サイト, デジタル放送, アナログ放送
まだプレーヤーが出回っていない上に、コンテンツの提供も少ないBlu-rayHD DVDが値段は一番高い。DVDがそれに続く。アニメコンテンツだと、映画などに比べて価格が非常に高いことが多い。有料ネット配信やレンタルDVDになると、値段はぐっと下がって、1話数百円〜百円レベルに。



本来、高品質だったり、高い利便性である提供手段にこそ対価としての料金を支払いたいという心境があるが、実際は高品質なデジタル放送を無料で楽しんでそれが録画可能だったり、せっかく利便性が高い手段のはずのネット配信がさまざまな制約だったり、レンタル形態のみだったり、低クオリティだったりでユーザーから敬遠されがちだったりする。

品質や利便性と、コンテンツ入手手段によって支払う値段が一致していない現状。



高い料金を支払って購入するDVDが、デジタル放送より品質の面では下というのが非常にねじれている状況を感じる。かといって、再生環境を選ぶハイビジョン映像はそう簡単に普及するとも思えず、Blu-rayHD DVDによるコンテンツの提供はまだ少ない状況で値段もかなり高い。

無料で手に入るデジタル放送の録画より品質の低いDVDをお金を払って購入してもらうためには、映像特典をつけたり、初回限定版でさまざまなおまけをつける、などの形になってるんだと思う。ただ映像を見たいだけの人にとっては、おまけ満載な初回限定版は見るだけでうんざりだったりするけれども。映像特典は見たいけど、おまけとかいらない、なんて人の選択肢は用意されてない場合がほとんど。



視聴者側として考えると、テレビ放送で見るのと、動画共有サイトで見るのには、無料で見られるという点ではなんら違いはない。利便性が勝っている点(時間や地域に縛られずに閲覧可能、関連動画を探せるなど)を考えると、動画共有サイトで見る方が快適だって人が多いはずで、動画共有サイトがここ数年で急成長したというのはそれを表してるのだと思う。

人ってのは欲深いもので、一度快適な環境を知ってしまったら、そう簡単には後戻りできない。



DVDを購入する人ってのはどうしてDVDを購入するんだろう? 自分の場合で考えると、作品が気に入って何度も見たいから、それなりな品質で楽しみたいから、見る方法がそれしかないから、ってのがある。


作品が気に入って何度も見るってのは、人によっては理解されなかったりする。アニメだけじゃなく、漫画や小説、映画、音楽などでもそうだけど、気に入った作品は手元に置いておき、好きなときに何度でも見たいという欲求がある。でも、世の中にはそういうコンテンツは一度見たらもうお腹いっぱいって人もいる。そういう人はたぶんDVDやCDを買わない。

それなりな品質で楽しみたいってのは、デジタル放送に移行すれば無料で可能になってしまったりする。映像特典とかおまけに興味ないって人なら、デジタル放送を録画するだけで無料で高画質なコンテンツを楽しむことができる。これってどうなんだろう?

見る方法がそれしかないからってのは、動画共有サイトが出てくる数年前までは結構現実としてあった。レンタルしようにもレンタルに入っていない(地方だとありがち)、テレビ放送は見逃した、もしくは地方で放送されない、そんなときは実際にDVDを購入するより他に閲覧手段はなかった。ただ、この場合も全く情報0から購入したいと思ったのではなく、どっかで映像の一部を見て気になったとかいうパターンがほとんど。



レコーダーが故障し、更にはテレビまでもが故障してしまっているうちの環境では、今テレビ放送を見ることは出来ない。気になるテレビ番組は、動画共有サイトを探して見ている。そこで閲覧して気に入った作品は、原作の書籍やサントラCDやDVDを購入したりする。気にいった作品を全て購入できるほど余裕がある訳ではないので、あくまでお気に入り度の高い順番からの購入になるが。

そもそも閲覧しなかった作品は購入対象にすら上がらない。



テレビで見て、録画するのはかまわなくて、動画共有サイトで見たり、動画をダウンロードするのはいけない、というのはいったい何が違うのだろう? 見るという行為に関して言えば、ユーザーにとってはどちらも同じ行為でしかないのに。

不特定多数の人に動画を配布してしまうのがいけない、というのは分かる。そして、動画共有サイトのほぼ全てが権利を持たない人の動画アップによって支えられているという理由から動画共有サイトでの閲覧もいけない、という流れになるのだろう。


でも、見る側にとってみれば、テレビで見ていいものが、ネット動画共有サイトだとダメだと言われてもそう簡単には納得いかない。むしろ、時間や地域を限定されるテレビより、利便性で勝るネットで配信してくれよ!ネットで利便性の勝る配信をしてくれよ!(配信されているものもあるが、いろんな制約で見られなかったものも多い)と言いたくなるくらい。

たぶん、動画共有サイトからアニメが全て消えてしまったら、テレビを見れない今、アニメを見ることはたぶんなくなるだろう。



ネットがなかった頃だって、テレビで見た全ての作品のビデオやDVDを購入するわけじゃなかった。気に入った作品だけを購入してた。DVDのような高価な対価を支払うには、対価に見合うだけ作品を気に入るというハードルを越えないと購入には至らなかった。それはネットで動画を見るようになった今でも変わらない。


このねじれにねじれてしまった状況はどうやったら解消するんだろう?