アナログからデジタルへと変化していく時代のまっただ中

20世紀から21世紀になり、世の中のいろんなモノがアナログからデジタルへと変化しつつあります。テレビ放送はアナログ放送からデジタル放送へ。音楽はカセットテープやレコードのアナログからCD、音楽配信のデジタルへ。カメラもアナログ銀塩カメラからデジタルカメラへ。本は紙の本がアナログで電子書籍がデジタル? 


テレビ(アナログ→デジタル:移行完了)


地上波の話ですがアナログ放送が2011年に終了して、もう2年。


アナログ放送からデジタル放送になって画質は大幅に向上したものの、映像データ圧縮に伴うノイズ(元々ノイズ上な映像は圧縮しにくいことによる、キラキラ背景にキラキラの紙吹雪みたいな紅白歌合戦みたいな番組で画面がジラジラしてるのって言えば分かる?)、チャンネル切替がアナログ放送と較べて時間がかかるようになったこと、録画環境で言うとデジタルになって便利になると思ってたのが制限が厳しくなるばかりでアナログ時代よりかえって使いにくい環境になってしまった、など、アナログ→デジタルで劣化してしまった部分もあります。



デジタルってことで言えば、テレビ放送は何も電波に乗せて飛ばすってことにこだわる必要はなく、ネットを使って放映時間や放映地域に囚われることなくデータ配信で番組を公開するって方向性も有りで、海外ではネット番組配信が普及しつつある国もありますし、日本でもアニメなんかではそういう公開スタイルもよく見られるようになってきました。



音楽(アナログ→デジタル:移行完了)


音楽はデータ容量が比較的軽いため、かなり早い段階でアナログ→デジタルの移行が進んでました。CDの登場が1980年代で、今から30年近く前ですしね。ただし、音楽メディアの記録媒体はその後さまざまな方式が出たものの、本格的に普及したのはCDが最後になっている感があります。大勢のユーザーの望む品質はCDで満たされているってこと。



21世紀に入り、mp3のような圧縮方式の登場、記憶媒体の小型化、大容量化によって、デジタルオーディオプレーヤーが普及することに。ここでの大きな変化は以前のようにメディアを入れ替えることなく数百、数千、数万曲もの音楽を楽しむことができるという利便性の向上。



また、以前はレコードやCDのような何らかのメディアに保存された形で音楽が販売されていたものが、ネットワークの高速化、通信技術の発展によって、データ自体を直接配信するという音楽配信が登場し、「保存場所を取らない」「欲しい時にすぐ買える」「売り切れが無いなど」これまたユーザー側の利便性の向上が見られたが、販売する側としてみると「アルバム購入から欲しい曲購入に流れられることへの抵抗」「稼ぎ頭のCDの売上を奪うことへの抵抗」「販売したデータをコピーされるんじゃないかという恐れ」などで、遅々とした販売拡大状況となっている。


カメラ(アナログ→デジタル:大部分移行完了)


民生機でも1990年代から登場してきたデジタルカメラ、最初こそ銀塩カメラとは全く比較にならない画質でマニアのおもちゃ状態だったのが、恐ろしいスピードで進化を遂げた。その進化の勢いはすさまじく、銀塩カメラの置き換えにとどまらず、様々なデジタルデバイスに搭載され、撮影という活動が一部の限られた人から誰しもが普段から身近に普通に行う活動へと変化させた。


また静止画を撮影するカメラと動画を撮影するカメラ、アナログ時代は別物という感覚が強かったが、デジタル時代になってどちらの装置でも静止画・動画ともに撮影可能ということで、境目はどんどんなくなってきている。



また、撮影した画像もネットと通信技術の進化で日常的に簡単に公開、共有することが可能となっており、世界中の人が撮影したあらゆる画像が何処ででも簡単に見られる時代になっている。一方であまりにも素早くこうした撮影環境が普及してしまったため、プライバシーや肖像権、撮影モラルなど、考えるべき点も多く見受けられる。



書籍(アナログ→デジタル:移行中)


紙に記録された書籍という形式は歴史が古く、多くの人が日常的に慣れ親しんできたものだけに、上述してきた他の事例と比べるとデジタル化の歩みはかなり遅い部類。アナログ→デジタルと移行するのに際し、「文章を記録するフォーマットの問題(特に日本語は特殊ルールが多い)」「表示するデジタルデバイスの問題(紙の書籍の質感、利便性を再現しうるデバイス)」「販売する側の体制の問題」等の問題点があり、それぞれ未だに解決していない部分も多く、これらが書籍のデジタル化が遅れた原因となっている。



「文章を記録するフォーマットの問題」として、一般の人は特に意識することなく読んでいる書籍では、文章を表示するための細かいルールがたくさんあり、それらをうまく解決して電子書籍化できるフォーマットを作るのが難しかった、今でもいろいろと努力されている、ってのがあります。


「表示するデジタルデバイスの問題」ってのは、デジタルデバイスには必須なバッテリの駆動時間、紙の書籍のようにパラパラとめくるように目的のページを探せるUI、印刷品質に匹敵するクオリティの表示品質、デバイスの重さ、などなど。本を再現するってのは、案外難しいことなのかもしれません。


「販売する側の体制の問題」ってのは、他の事例でデジタルに移行した後、販売方式もソレにともなってネット配信へと変わっていくことへの抵抗です。物質が存在する商品はどこかの店舗で買うか通販で購入するという形になりますが、データとなり物質が存在しない商品はネット上の配信という形で販売するのが一番自然で、そうなると販売形式そのものが大きく変革してしまうため、元々の販売形式とどう折り合いをつけるのか、というのは悩ましいところです。


アナログ→デジタルの移行というのは産業そのものの体制の変革


アナログ→デジタルへの移行状況、いろんな事例に触れてみましたが、全てに共通して見られるのはまず「再生・記録装置がアナログからデジタル対応へと進化する」、それに続いて「再生・記録装置の普及による利用人口の拡大」「コンテンツ流通もアナログ時代の方式からネット配信への要望」という流れがおこります。



アナログ時代の物質がある商品の販売から、デジタル時代のネット配信への変化ってのは、こうやって文章にしてしまうとアッサリですが、それを担っているさまざまな産業ってのは物凄い変わってしまうんですよね。


たとえば、書籍の例だとアナログ時代には「作家」「出版社」「印刷業」「問屋」「流通業」「販売店」が存在して、やっと我々のもとに書籍が届く訳です。これがデジタル時代になると極端な例なら「作家」「配信業」だけで、我々の手元に電子書籍が届くことになります。まあ、個人で書籍のすべてを作り上げるのは大変なので「出版社」の役割は残るかもしれませんが、「印刷業」「問屋」「流通業」「販売店」辺りは電子書籍となると存在意義を見出すのが困難です。そういう変化が生じてしまう、ある分野に関する産業形態そのものが変わってしまう。


だからこそ、変化への抵抗はもちろん起こりますし、更にはアナログ時代にうやむやにしていた法律や契約などの問題点が浮上してくることにもなる。



そうは言いつつも、アナログ→デジタルな流れを止めることはできそうにありません。20世紀から21世紀にかけてのこうした変化は情報革命として後の世に伝えられることになるのでしょうが、過去に囚われてアナログ時代な形を過度に守ろうとすると、単に利用者は他の選択肢へと移ってしまうだけ。新しいデジタル時代にはどういう形がありうるのか、そこにどうやって参加していくのかを考えていくのが生き残りに重要な要素なんだと思います。