本とウェブが融合する未来


ところてん - 日記/2008年07月02日/ハチロク世代がやらなくてはならないこと」を読んで。

ハチロクより前の世代の勉強のためのツールは本であった。 本は過去の失敗を蓄積し、ナレッジベースとして高い価値を持っている。 ハチロクよりも前の世代では、インターネットに載っていない情報があることは知っており、勉強をしたいと思ったら本を読む。 インターネットは補助的に使い、学習のメインは本を使って行う。

今までの膨大な量の情報が残されている本という媒体。そして、たった10〜20年ほどの間に恐るべきスピードで情報の蓄積が行われてきたウェブ。今後も情報の蓄積は進んでいくのだろうが、本とウェブの両方が共存する時代は今後も数十年の間は続くはず。

  • 本の良さ
    • まとまった知識を得られる
    • 持ち運びしやすい
    • 読むための装置を必要としない
  • ウェブの良さ
    • 情報の更新、修正などが容易
    • 低コストで多くの人が読める
    • 双方向のやりとり、コミュニケーションも可能

本に蓄えられた情報と、ウェブに蓄えられた情報は同じにはならない。片方にしか蓄えられていない情報があるから。本はこれまでの過去の何千年もの情報を蓄えており、一方のウェブは今現在、ものすごい速度で発展していく最新の分野の情報がアップされている。

もちろん、本に書かれていた情報がウェブにアップされたり、ウェブに書かれていた情報が本になったりというのもあるが、片方にしかない情報というのもたくさんあって、そこに本の情報とウェブの情報の間の断絶が生まれる。



本とウェブの両方を見て来ている世代からすると、「勉強するときには絶対に本を読め」「互いの知識を交換しつつ高め合えるウェブで勉強するべし」ってのは、どっちももう片方の知識が持つ可能性を軽んじてるようにしか見えない。蓄えられた知識や情報の特性の違う二つの媒体(本とウェブ)がある時代に生きてるんだから、うまく両方を使いこなせばいいだけのこと。

ひとつのまとまったテーマや過去のある分野の流れを学ぶときには本を利用するべきだし、何かを学ぶときに同じ志を持った人達と情報交流して学習したり、自ら情報発信して同士を探したりしたいときにはウェブを使えばいい。


ハチロク世代は同世代が集まって私塾のようなことをやっている。 ウェブを学習のナレッジベースとしている人々の私塾であり、そこで交換される情報は、ウェブができた後に発見された事柄である。 しかも、彼らの世代以外の人は、なかなかその輪に入ってはいかない。 すでに学習のアプローチが異なるので、彼らとともに勉強しようにもついていけないからだ。 つまり、彼らの中ではウェブができる前の情報は交換されていない。 これがハチロク世代が浅はかに見えるところでもあり、素晴らしいところでもある。

本の情報とウェブの情報との間にある断絶のせいで、本にすでに書かれているような情報をウェブだけを利用して学習した人々が再発見してしまうなんてこともあったりする。これは「すでに知られていることを再発見したからと言って何の意味があるんだ」と見るか、「周りの状況が変わった時代で再発見することは、過去の発見時には気づかなかった別の発見にも繋がるかもしれない」と見るかでずいぶんと違う。



どんな学問も、過去の多くの知識の蓄えの上に成り立っているが、その過去の知識の蓄えは年々増大していっている。最先端のことを学び新しい道を作るのには、当然過去の知識を見て、その先に何があるかを考えなければならないのだが、この過去の知識の部分がどんどん増大していった先には、なかなか最先端の状況にたどり着けないなんて未来もやってくるのではないだろうか。

ウェブのように一気に最先端の知識まで到達できるような知の高速道路みたいなしくみは、そういう時代のために必要だが、その高速道路を作るという作業は結構地道で困難を伴う作業だったりする。すでに存在している入り組んだ道ではなく、最先端に到達するための最短距離を目指し、過去の知識をうまくまとめていく作業を伴うからだ。

多くの開拓者達が必死にあちこちを開拓して見つけた新しい場所に、やがて高速道路が作られてより多くの人達が到達できるようになる。分野によってその進み方や方法は違うのだろうけど、多くの知の高速道路が建設され、それを大勢の人が利用できるようになるってのは、ウェブが無かった時代には出来なかったことで、人々の知的レベルがいままでとは違うステージへと移ることを意味している。



ずいぶん先の未来を考えると、本とウェブは融合すると思う。ウェブが本を取り込むという形で。今も、過去の書籍をウェブへと吸い上げる作業を行っているGoogleを始めとして、さまざまな知識がウェブ側へと吸収されつつあるし、何度となく発表されては失敗を繰り返している電子書籍も、本のメリットを満たすようなデバイスが現れ、いつかはごく普通に当たり前に使われる時代が来るだろう。


「かつて、人は本と呼ばれる紙でできた記録媒体に情報を記していた時代もあった」と言われるようになるのは、いつの未来だろう。