テレビとYouTubeとDVDの未来はどうなるか?


YouTubeがテレビになるなんて10年早い|技術動向|毎日がアップデート|あすなろBLOG
404 Blog Not Found:YouTubeがテレビになるのには10年もかからない」を読んで。


YouTubeに関する話題を読んで、テレビ、YouTube、DVDの未来について考えてみる。

YouTubeをとりまく状況

しかし、ある日突然、一国の政府が「YouTube著作権違反のファイルが沢山あるようだから、全て合法的なファイルになるまでサービスを続けてはいけない」というお達しを出したらどうだろうか? たちまちYouTubeはサービスを続けられなくなるだろう。

違法コンテンツについて、今はお目こぼしをもらってるだけでいつサービス停止させられるか分からない、確かにその可能性は考えられる。でも、Napsterの時は音楽配信を合法的に著作権者に利益がわたる形で実現する方法がまだ見えていなかった。

今は、音楽配信についてはiTMSを中心としてさまざまな配信業者が配信を行うようになっているし、映像配信にもその勢いは広がろうとしている。また、動画にあった広告を入れられるというコンテンツにマッチさせた最適な広告戦略に使える可能性もある。放送業界側が一方的に搾取されるような形態ではない形に進める土壌ができつつあるのだ。

 もう一つ、問題なのはYouTubeの試聴スタイルだ。YouTubeを利用して自分の好きな動画を見るためには、YouTubeから検索して探すか「まとめサイト」で見つけなければならない。要は検索しないと動画が見られないのだ。

 常に目的があってテレビを見ている人はそれでいいかもしれない。しかし、見たい番組がわからない人、もしくは番組のタイトルがわからない場合は、いつまで経っても動画を見ることはできない。

受動的にテレビを見たい人、能動的に自分の探している番組を見たい人、それぞれいると思う。だから、従来式の放送側が決めたプログラムを流し続ける形態のテレビ、YouTubeのようなユーザーが見たいものをウェブ上で提供できるしくみ、これは両方必要なんだと思う。どちらかが残るのではなく、両方が共存するのがユーザー全体にとっては幸せ。

さらに言えば以前にもご紹介した通り、HDDレコーダーに自分の興味がある番組を死蔵している人も多くなっている。今でさえ、こんな状態だ。果たしてテレビを本格的に見ている人にYouTubeで番組を探す時間があるのだろうか? 私なら「我輩は主婦である」や「アキハバラ@DEEP」をYouTubeで探すのであれば、HDDレコーダーに予約して見るだろう。

HDDレコーダーは私も3年ほど使っていて確かに便利である。このHDDレコーダーって装置は受動的に見る従来のテレビ放送と、能動的に動画を見るYouTubeのようなしくみの中間に位置するものだと思う。

能動的に見ようと思うから、自分の見たい番組を録画する。録画した番組は見ようと思ったらいつでも見ることが可能になる。でも、録画してある番組しか見ることはできない。当たり前のことだが、ここがHDDレコーダーの限界で、同じ能動的に見たいものを探すときでも、自分がチェックしていなかったものまで見ることができるYouTubeとHDDレコーダーの間には大きな隔たりがある。HDDレコーダーでは、放送後に「あ、あの番組見たかった!」って気づいても遅いのである。

PS:今日、HDD録画に失敗して「我輩は主婦である」が見られなかった… ケチケチしないでもっと大容量のHDDレコーダーを買えば良かった…

HDDレコーダーのもうひとつの欠点が録画に失敗すると見られない、HDDの容量までしか番組を保存できないところにある。今は違法コンテンツは放送局側が消そうとしてたり、長時間ファイルがアップできないようになっているので、YouTubeで録画しそこねた「我輩は主婦である」は見ることはできないだろうが、YouTubeと放送業界が手をくめば見逃した、録画しそこねた番組を見ることができるかもしれない。


YouTubeが見せるTV 2.0の可能性

しかし、これだけはわかる。

Web VideoこそTV 2.0なのだということが。

YouTubeを使って、さまざまなコンテンツを見たことのある人なら気づくだろう、ただ放送局の決めたプログラムに従って流されているテレビ放送に比べて、ユーザーが気に入った部分をアップしてあるYouTubeのような形がどれだけ快適にコンテンツを楽しめるかを。

確かに動画の画質は荒いし、通報によって消されてしまうこともあるが、これこそがテレビの未来の姿だ!と感じている人は多いと思う。

だからこそ、普段はそんなだらだらした時間の使い方には耐えられない。見たい番組、いや見たい箇所だけをサクっと見たいのだ。YouTubeは不法アップロードに根を上げてか、一番組10分の制限を設けるようになったが、実はその後の方が使い勝手は上がっているのだ。人間は実は5分とじっとしていられない生き物。10分でも長すぎるかもしれない。

コンテンツ自体はテレビ放送時と変わっていない(それを抽出しただけ)なのに、自分が見たいときに見たいものが見られることがこんなに素晴らしい体験だってのは、YouTubeを体験した人しか分からない。今の同じ番組を何度も何度も繰り返し放送したり、もったいぶってなかなか見所を見せなかったりというテレビ放送の編集にうんざりしてる人にとっては、もう垂れ流しのテレビ放送に戻る気を無くさせるだけの魅力があるのだ。

同じコンテンツを使っているにも関わらず、だ。

逆に面白い番組であれば、一度作ったら何度もCMを付けることもできる。それもとってつけではなく、番組内容にあったCMをもっときめ細かにつけられるだろう。なにも番組そのものに無理矢理挿入する必要はない。番組のPermalinkに直接出稿すればいいのだ。いや、番組のPermalinkそのものをオークションにかけることだってできるだろう。どっちが出稿者にとって魅力があるかも明白ではないか。

コンテンツに見合った広告が出て、それがユーザーの視聴を妨げない形であるのなら、スムーズに受け入れられ、また大きく利用される可能性があると思う。自分の見たい情報、動画を見て、それに沿ったCMがそこにあったらクリックしてみたくなるものだろう。


テレビとYouTubeとDVD


テレビはコンテンツの大元の供給源として、受動的に何かを見たい人にとってありつづけるだろう。


YouTube、またはそれに変わるウェブ動画サービスは、テレビ放送のコンテンツ、またユーザーの作ったコンテンツ、とにかくあらゆるコンテンツを能動的に見たい人にとっての画期的なしくみであり、これから広がり続け、人によってはこれがコンテンツを見るメインな手段になるだろう。


では、DVDのようなコンテンツを保存して売られるメディアはどうなるのだろう? YouTubeのように好きなときに好きなコンテンツを見られる形がでてきたら消滅してしまうのだろうか?

そこはYouTubeとは違う方向での進化があるのではないかと思っている。家庭に大型テレビが普及してきて、ハイデフ(高解像度)映像が自宅で楽しめるようになってきた今では、それを有効活用するコンテンツは必ず必要とされる。YouTubeのようなネットを媒体とした手段では、まだそのような高解像度な映像を大多数の人に配信できるほどには高速化、安定化はしていないし、そうなるにはまだしばらくかかるだろう。


でも、HDDレコーダーが普及してきているため、ただハイデフコンテンツを記録しただけのようなものだと、それがテレビで放映されていないようなコンテンツでないとユーザーになかなか受け入れられないだろう。そこは、特典映像などのそのコンテンツに沿った内容を含ませることで、ファンがそれを購入したくなるような形でまとめる必要があるだろう。


それぞれの未来は?


テレビ放送は、2011年にアナログ放送が終わり、デジタル放送に切り替わる部分で大きな混乱が起きるだろう。今のデジタル放送を録画できるHDDレコーダーを使ってる人は気づいていると思うが、録画環境に関してはデジタル放送は縛りがきつすぎてユーザーが真っ当に使える代物ではない。

(参考:【コピーワンスを考える】<読者放談会>わたしたちはコピーワンスに反対です!(前編) AV&ホームシアターNews

それにそう簡単にデジタル放送を受信できる装置が全世帯に普及するとも思えない。



YouTubeには大きな可能性があるが、未だに収益を得られるビジネスモデルを提案できていない。もちろん準備はしているだろうが、タイミングを誤ったり、違法コンテンツアップへの抵抗が思ったより強かった場合には、Napsterと同じ道を辿ってしまう可能性がないともいえない。また、ユーザーの増加にサーバ環境などのインフラ側がついていけるのかどうかにも不安がつきまとう。

ただ、ユーザーがネットによってコンテンツを見るようになって来ているのは間違いない。

(参考:ネットユーザーの3割が動画配信を活用--人気上位は「GyaO」と「Yahoo!動画」 - CNET Japan

たぶんこの流れは止まらないだろう。



DVDの後継であるHD DVDBlu-rayは、ようやく製品が出てきたばかりでこれから市場争いをする段階である。ユーザーは一方が主流になったと判断するまではなかなか手を出さないだろうから(ビデオのベータとVHSの競争、その後どうなったかを知ってる人はもちろん多い)、二つの規格は争うことはこの手の光メディアによるコンテンツ提供という形にとっては大きなマイナス点だろう。二つの規格が争ってる間にユーザー側が見切りをつけて、YouTubeのように簡単に見たいものが見られる手段へ興味が移ってしまう可能性が大きいからだ。



三者三様な状況で、これらが今後どうなっていくかは、たかだか数年後であっても予想が付かない。2年前にはYouTubeは存在してなかったのだ。



ただ、ネットが普及し、ユーザー側が声をあげることができるようになった今、ユーザーを軽視したサービスが主流になることはないだろう。コンテンツを提供する側はそれを誰が見るのか?という事を忘れないで欲しい。