地方でネットの利用が進んでいない話(2)


地方でネットの利用が進んでいない話 - 北の大地から送る物欲日記」への反応が多かったので、それをふまえての続き。


地方でのネットの必要性


ネットの便利さというのは、必要な情報がしっかり発信されているのであれば、地方・都会を問わずに変わらない。



病院に行こうと思って場所や問い合わせ用の電話番号、診療時間を調べたり、図書館の開館時間や蔵書情報を調べたり、開催されるイベントの情報を調べたりと言うのは、地域の掲示板やご近所の口コミ、電話連絡でも調べられるが、時間を問わず好きなタイミングに調べられるというメリットは大きい。

また、ネットで情報発信すればどこからでもそれを閲覧できるという特性から、地元だけではなく近辺地域の住民や旅行者などにもアピールできるという利点もあり、より地方のことを広くアピールしたいとか(観光業など)、利用者増を考えているという施設・イベントなどでは大きな効果が期待できる。



にも関わらず、地方でのネットによる情報発信があまり進んでいないというのは、「はてなブックマーク - 地方でネットの利用が進んでいない話 - 北の大地から送る物欲日記」でのコメントにも見られるように、多くの要因が関わっていると思われる。


地方でのネット利用の遅れ


そもそも、地方ではネットを利用してる人の数、割合が少ないような気がする。



例えばパソコンの普及を考えてみると、そもそもパソコンが家庭に入ってくるってのは家族の誰かしらが家庭外でパソコンに触れた経験があって、そこで便利さを知って家庭にも導入するって流れが多いと思う。例えば、大学でレポートや卒論を書くのに使ったとか、会社で仕事に使ったとか。

地方には都会と比べると大学は少ないし、会社でパソコンが使われている率も中小企業が多い地方ではパソコンを使う仕事が多くを占める都会と比べると低いであろうことは想像に難くない。


今やネットを使うもう一つの道具となった携帯電話はどうだろう? 携帯電話の普及率自体では都会も田舎もそう大差ないように思われるが、電車移動などで携帯電話のネット利用機会が多い都会と、車移動などで携帯電話のネット利用機会が少ない田舎ってのは簡単に想像できる。



これらの要因によって、地方では都会と比べるとネット利用そのものが遅れていて、それがネットにおける情報発信の必要性の理解不足に繋がってるのかもしれない。


少ない人口による発信者不足


日本におけるブログの開設数自体は1000万を超えているらしいが、実際にアクティブな(定期的に更新されている)ブログの数はせいぜいその十分の一の100万前後ではないだろうか? このことから単純に考えると、ブログなどで情報発信してる人の割合は100人に一人くらいの割合になる(ものすごい大雑把な話ですが)。



人口が100万人の都市なら情報発信してる人の数は1万人になって、それなりにいろんなジャンルを網羅できるだろうし、ブログまで行かなくても口コミサイトなどで口コミ情報を書いてくれるような人もそれなりにいると考えられる。

でも、これが人口5万人の都市になると情報発信してる人の数は500人。この数では、発信される情報のジャンルに偏りがあるだろうし、上述の地方でのネット利用の遅れを考えると、数的にはもっと少ない情報発信である可能性も十分に考えられる。



こうして、個人による情報発信も少ない地方では、地元の情報に関してネットを利用して便利さを体感できるという事例が必然的に少ない。そして、「何かを知りたくてネットを見てみたものの知りたかった情報は見つけられなかった」というように、便利さが感じられないからネットを利用しなくなるという負の連鎖が起こって、なかなかネットによる情報発信が広まらない。



これはブログによる情報発信の話だったが、企業や公共施設、イベント運営者などによる情報発信の話でも似た様な感じで、関係者の中に情報発信の意義が理解できる人がいないとそもそもネットによる情報発信に繋がらないし、ネットでもっと情報発信しなくちゃ!って人がいても、実際に情報発信できるスキルを持った人が内部にいるか、もしくはそれを任せられる外部業者・予算が無いと、やはり情報発信できない。


人口の少なさによる匿名性の低さ


口コミ情報のような店や商品、サービスに対する評価を情報発信する形の場合、その情報発信には誰がその情報を発信したかということが分からない匿名性がある程度必要とされる。誰が書いたかがはっきりと分かる場所では、良い評価は書けても悪い評価は書きにくいから。


一番分かりやすいのは医療機関の口コミ系サイト。都会に住んでるときは、病院に行こうと思った時は事前にこの手のサイトで口コミ情報を参照できて、評判のいい所を探すことができた。

人口が少ない地方ではどうしても匿名性が低くなるため、口コミ情報のような情報発信を行う心理的な敷居が高い、というのもあるかもしれない。


インフラ不足、Webの仕事が成立しない状況


今でこそ光回線が全国的に普及しつつあるが、それでも地方によってはまだ光回線が利用不可能だったり、ADSLなども利用しにくいといったネットインフラ的に利用が難しい地域も完全に無くなった訳ではない。そういう地方では、そもそも情報発信以前の状況にある。



また、ネットによる情報発信を行うようなWebサイトを構築するような仕事が地方には根付いておらず、頼みたくても頼む人がいない(連絡自体はネット越しに行えるが完全にネットだけでやりとりするのはまだ難しい、利用者のネット利用能力的にも)、そういう作業がどれくらいのコストなのかが分かりにくいので予算をつけにくい、比較的ネット活用に強い若い人達が都会に流出してしまって少ない、など、利用したくてもできないという状況があるのかも。


誰がこの状況を動かすのか?


かつて、楽天がネットショッピングの分野でそれまでの参入コストから大幅に少ない金額でのネットショッピングへの参加を可能にしたことで、大きくネットショッピングのマーケット(店舗の参入)が増加したみたいな形で、低コストで情報発信を請け負ってくれるようなサービスが提供されたら、こういう状況は大きく変わるのかもしれない。



他の情報発信手段との比較で考えると、今はまだ紙媒体(新聞チラシやタウン誌)の方が宣伝力は高いように感じられているかもしれないが、近い将来的に新聞やタウン誌自体の存続が危うくなる可能性も十分考えられるし、かかるコストだってシンプルなサイトやブログ利用による情報発信に限ればそう爆発することも考えにくい。

ネットの利用だって、今は遅れていても次第に利用者が増えていく傾向にあるのは間違いないし、一旦広まりだせば便利さが理解されて一気に広まる可能性もある。旧来の情報発信手段からネットでの情報発信手段へと移行していくのは時間の問題なのかも。



広く浅くだけど、まだまだこういう場所にビジネスチャンスはあるのかもしれない。

広く浅く、をうまく救いあげて形にするようなシステムを構築するのは難しそうだが、どこかがそういうシステムを開発するのか(現状ではGoogleが無料でそういうサービスを提供しそうだけど。すでにベースはあるし)、小さな個人的な仕事としてそれらを担っていく人達が現れるのか、このまま地方は取り残されたままになるのか。


今は実際に地方に住んでる身なので、結構大きな問題として考えている。


関連記事:地方でネットの利用が進んでいない話(3) - 北の大地から送る物欲日記