今夜も無事、家に帰れますように

北海道の冬は厳しい。



本州以南に住んでいる人々には「あんな寒い所に人が住んでられるなんて信じられない!」と言われるが、冬場に氷点下までほとんど下がらないような地域の建物はそもそも断熱材何それ美味しいの?暖房なんてないよ?みたいな所もあったりして、断熱材たっぷり3重窓暖房ガンガンな真冬まっただ中にアイスを美味しく頂いている道民の家より、ずっと、ずっと寒かったりする。

冬の北海道の家はいわばベースキャンプみたいなもの、そこに帰り着いてなんとか暖を取らないと死活問題なだけに、人々は命をかけて自宅へと帰ろうとする。



冬場に家に帰るとき、それを妨げようと立ちはだかる大きな障害として挙げられるのはふたつ、吹雪と凍結路面。



吹雪と言うと空から大雪が降ってくるのを想像するかもしれないが、降り積もった雪が強風で煽られて吹雪となる地吹雪もまた恐ろしい存在。外を歩く人は何時しか歩く雪だるまへと姿を変え、走る車はライトの明かりだけが目印となる恐怖のドライブへと誘われる。



そして、もう一つの障害、凍結路面。吹雪がじわじわと人々の体力を、運転するドライバー達の視界を奪って行くのに対し、奴らは一刀両断、一瞬で我々にとどめを、そう、見事なまでに綺麗に宙を舞わせてくれる。

4つのタイヤで走る車は宙こそ舞いはしないが、速度がのったまま何かの拍子に一度滑ってしまうと、車はいとも簡単にさながらカーリングのストーンのごとく滑り続ける。凍結路面で皆がそろそろと滑らない様に、隊列で歩くペンギンのような速度で走る列に、突如現れた暴走車がきっかけとなって、ビリヤードのブレイクショットがごとく四方八方車が乱れぶつかりまくる多重衝突事故が起こったりもする。



そんな障害と戦いながら、人々は自分のベースキャンプ、自宅へと帰るべく、進み続ける。



気温もせいぜい氷点下10℃付近まで、積雪もいいとこ一晩50cmくらいまでな北海道の中でもイージーモードな我が道南地域でも、寒さが厳しく無く、氷点下付近なためにかえって滑る凍結路面が我々の家路に待ち構えている。一度昼間の陽気で溶けた氷が夜の寒さで再び凍った直後や、凍った路面にうっすらと積もった粉雪なんてのは、正に滑るために、いや滑らせるために生まれて来た状態。

そして、凍結路面とタッグを組むと最強なのが坂道。普通に歩いても滑る、ブレーキ踏んでも滑る、そんな状態の凍結路面な道に傾斜がついてるなんて、むしろどうやって登るんだ?スパイクか?今はもうスタッドレスタイヤなんだ、と愚痴りたくなるくらいにデンジャラス。



しかし、ちょうど滑り頃な最強の凍結路面に出くわすのは、年にせいぜい1〜2日というもの。その1〜2日をなんとかしのぐために、FF車は尋常じゃない苦労を強いられる。グリップを取り戻すため、少しでも他人の通ってない部分を走るために道をはみ出ない・対向車が居ない状態で蛇行運転、それでも滑れば後ろ向きなり後輪駆動状態にチェンジし、それでもダメならバックでハンドル切りつつ蛇行運転。



今年三回目となる冬を迎えたうちのFF車ストリームは、今冬も無事、毎日の登坂をやり遂げられるよう、無事、家へとたどり着けるよう、毎晩、吹雪と凍結路面に見舞われない、祈りながらの運転。どうか、この冬は凍結路面になりませんように。いつも1分で登る200mほどの坂道も、過去は最大1時間ほどかけて登ったことも。(幾度もの連続トライでなんとか登りきる)



年内は後6回、この冬なら後100回ほどの登坂チャレンジが待ち受けている。




今夜も無事、家に帰り着けますように。