Yahoo!ミュージックを聴きながら音楽配信を考える

Yahoo!ミュージックを試してみる

ヤフーが、フルサイズの楽曲約10万曲を無料で聴ける新音楽配信サービス「Yahoo!ミュージック サウンドステーション」をスタート。配信方式はあらかじめ用意された楽曲を聴くネットラジオスタイル。


Yahoo!ミュージックを試してみました。Macintoshは非対応、あとWindowsでもブラウザがIE以外だとダメなのかな? FireFoxではダメでした。こういうときだけ起動するIEを立ち上げてっと。


必要な環境が整っていれば、すぐに楽しむことができるぽいので、とりあえず「オール J-POP」をクリック。別ウィンドウが開いて、30秒のCMが入った後に曲が流れ出す。このウィンドウに曲情報が表示されて、そこからCDや音楽配信Yahoo!ミュージックにあれば、そこへ飛ぶことができるようになっている。

制限としては、Yahoo!IDでログインしてないと3曲までしか聞けない、5曲ごとに30秒のCMが入る、といったもの。Yahoo!IDを持っている人は多いだろうし、ラジオだと思って聞き流していれば30秒はいるCMも別段気にならない。


あぁ、これは楽だ。手軽にJ-POPを聞く手段としてはうってつけかもしれない。作業中に裏で流しっぱなしにしておいて、気になる曲があったらすぐにアクセスできるという、ユーザーとして欲しかった形のネットラジオってこんな感じ?ってのだ。

『無料で気軽に音楽と触れ合える場所』を創造し『偶然流れ出す音楽とのすてきな出会い』を提供することにより、音楽に触れる機会を増やし、CD販売の売り上げ増加、日本の音楽業界の活性化を図りたい

ヤフーとしても、まさにそこを狙ってきているらしい。

なぜいままで出来なかったのが可能になったか?


技術的には全然問題目新しいトコロはなく、音楽業界の権利問題がいままでこの手のネットラジオ風な音楽配信サービスを阻んできたんだろうが、このYahoo!ミュージックで実現するに至ったのは

・配信帯域は32kbps
・曲や歌手を完全には自由に選べないラジオ方式

辺りでうまいこと折り合いがついたからではないかと思う。


「配信帯域は32kbps」とかなり低い帯域ではあるが、視聴として考えるならこれくらいでも十分。そして、ある程度は自分で聞きたいものを選べるが完全に自由に曲を選んで聞くことはできないというのも視聴として考えれば十分。



日本で着うたフルが約300〜400円と比較的高い料金で、しかも配信帯域が48kbpsと低いにもかかわらず大流行してるのは、

「聞きたい時に手軽に購入できる仕組み」

をうまく提供しているのが非常に大きいと思う。

買わない人にとっては、携帯でしか聞けない、帯域が低い、高いなど多くのデメリットのみが目に付くが、実際に利用している人にとってはそんなことよりも、今、自分がこの曲を聴きたいときに簡単に購入できるというお手軽さの方がずっと勝っている(もしくはデメリットなんて考えてもいない)。


今回のYahoo!ミュージックはこの着うたフルのような欲しい曲に簡単にアクセスできる仕組みをうまくPC環境に持ち込んだ意味が大きい。手軽さでみれば着うたフルにはまだまだ及ばないものの、いままでのPC上での音楽配信の視聴すら面倒、しかも30秒のみなんてのと比べると格段にユーザー側に歩み寄っている。

ユーザーは音楽配信に何を求めているのか?

今さらと言われるかもしれないが、オンライン販売の利便性とはなにかということをもう一度おさらいしてみると、「検索性」、「即時性」、「値頃感」の3つであると考えられる。平たく言えば、「目的の曲を」、「今すぐ」、「音楽CDよりも安く」入手できるということである。

ユーザーが音楽配信に対して期待しているのは、まさにこの3点、「目的の曲を」、「今すぐ」、「音楽CDよりも安く」という部分だと思う。


「目的の曲を」(検索性)というのは、提供されている曲数が多いほど、そして検索のしくみが優れていて簡単に目的の曲へたどり着けるほど満たされる。 提供されている曲数は「いかに多くのレーベルと手を組めるか?」、検索のしくみはいかによい環境(ソフトウェア)での配信を実現するかにかかっている。

この点では、iTMSを含むどの音楽配信サービスもまだまだであると思う。音楽配信の大きなメリットとして、「配信曲数を増やす時、在庫数を考慮しなくていい」という点があり、極論を言えば、過去に販売していてすでに絶版になっているような曲をどんどんと配信に向ければ、またそこに新たなマーケットが出来るはず。

特に年齢が高い層はそういう懐かしい曲に対する興味は非常に高く、事実iTMSの売れ筋ランキングでも過去の名曲が今時な新曲とランキングに並んでいる様を見ることが出来る。いままでは失われていたマーケットがそこにはあるはずなのだ。



「今すぐ」というのは、利用媒体(PC?、携帯?)にかかっており、J-POPをよく聴くような若い層であれば携帯がうってつけだろうし、PCで音楽を楽しむもうちょっと上の年齢層(20〜40代)になればPC上が手軽である。購入に至るまでに認証やら手続きやらと面倒な手順がひとつ出てくるたびにユーザーは離れていってしまう。そのあたりのバランスがヒットしている着うたフルやiTunes Music Storeは優れている。



「音楽CDよりも安く」というのは現状のシングルCDでは2曲1000円と考えて、1曲500円くらいってのを考えると、高いといわれる着うたフルでもそれよりは安くなっているわけだけども、値段というのはそう一元的に考えられるわけでもない。ユーザーごとに持っている価値観で考えたて値段の折り合いがついたときに、初めて曲を購入するという行為に結びつくわけで、この辺の価値感は年齢でかなり違っているように思われる。


若い人はとにかく流行を追い求めがちで、今聞きたい曲をすぐに手に入れることに価値を見出す。また、年齢が高くなるにつれて自分の好きな曲のライブラリを持つことに価値観を見出すようになり、いかに自分が購入した曲を自分の利用したいように利用できるか(DRMの制限)に価値観を見出すようになる。


前者で考えたときには今の着うたフルの値段はそれほど抵抗にならないからあれだけ着うたフルがヒットしているのだろうし、後者の立場で考えたときは、いままでのDRMの制限(携帯プレーヤーへの転送回数制限、CDにも焼けない、PC間のコピーもできない、など)と値段(200〜500円)が折り合わなかったのが、iTMSが参入したことで下がったDRMの制限(iPodへの転送無制限、CD-Rにも自由に焼ける、PC間も5台まで共有可)と値段(150 or 200円)が価値観からみて折り合える点により近づいたからiTMSのこれだけのヒット(開始4日で100万曲販売)に結びついているのだろう。

音楽をもっと楽しめる状況を待ちわびるユーザー


いままでの説明の中で、「折り合い」という言葉を使ってきたが、音楽配信がブレイクするかどうかは、この「折り合い」がつくかどうかにかかっていると思う。いかにして、音楽を配信する側とそれを受け取るユーザー側の思いが「折り合う」条件を見つけて提供できるか。

いい「折り合う点」を見つけられれば、そこから一気にユーザーが流れ込む下地はすでにできつつある。後はどこがそこにいち早くたどり着くかで、今の日本では着うたフルとiTMSが一歩リードしつつ、後ろから他業者がそれを追いかける、という図式。


一ユーザーとしては、権利とか業界のしくみとかあんまり小難しいこと考えずに音楽が楽しめるような状況に早くならないかな、と思う。




【参考記事】
ITmedia ライフスタイル:10万曲が無料――ヤフーが新音楽配信サービス
ヤフー、ネットラジオ型の無料音楽配信サービスを開始 - CNET Japan
約10万曲を無料聴取できる「Yahoo!ミュージック サウンドステーション」
約10万曲を無料で聴ける「Yahoo!ミュージック サウンドステーション」
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Yahoo!ミュージック - サウンドステーション