ネットでの著作権の移り変わりをどう見てどう行動するか


ニコニコ動画で「羽生対中川」戦を見た - My Life Between Silicon Valley and Japan」を読んで。


ニコニコ動画で「羽生対中川」戦を見た、とブログに書いたことに対する反応。コメント欄のやりとりまで含めて。


私もこの動画は見ました。将棋は小学生のときに少しやってたくらいで、ただ指せる程度なんだけれど、将棋の話を見るのは結構好きだったりします。ものすごい大逆転劇で、解説、コメントと合わせて非常に面白くみることができました。


ニコニコ動画を見た、と表明すること


この梅田さんのニコニコ動画を見た、というエントリに対して、棋士窪田義行氏から「配慮していただきたい」という旨のコメントがついて、そこから生まれたやりとりが興味深い。


ネット上では、今、ニコニコ動画がかつてなかったペースで広まっていて、あっという間にYoutubeよりも話題になるようになった。著作権的な問題がいろいろと取り上げられているが、すでにニコニコ動画は存在していて、そのユーザー数は日々増えつつある状況。

umedamochio 『NHKにとって将棋番組の映像などロングテールロングテール。そういうロングテール映像については、特に今回のような素晴らしい内容が生まれた場合、「最善手」は、その映像をNHKが自らサイトで無償公開してファンを増やす(需要を増やす-->視聴率を上げる)ような動きをするのが合理的判断と考えます。「次善手」が黙認なのだと思います。そういう考えから、特にニコニコ動画を見たことを隠しませんでした。』

それに対する窪田義行氏の返答は

日本将棋連盟正会員も正会員たる私としては、「『最善手』も『次善手』も、スポンサーの事業方針に対する非現実的な干渉であり悪手」とご判断申し上げざるを得ません。

窪田義行氏はスポンサーであるNHKの立場を考慮しての判断であり、自身のブログでもこの内容についてのエントリを書いている。「義七郎武藏國日記 : 新たな時を開くかニコニコ動画


このやりとりについて触れた記事「梅田さんが"ニコニコ動画で「羽生対中川」戦を見た"という話。 - 日々、とんは語る。」でのコメント欄のやりとりも興味深い。


NHKアーカイブを公開してもらうよう働きかける所から入るべきなのか、すでに多くの人に見られてしまうというニコニコ動画YoutubeのようなWebサービスが出てきてる以上、その意味をもっと捉えるべきなのか。


ネットユーザーの反応としては、やはり以下のように感じる人が多いのではないだろうか。

otsune 『>「『最善手』も『次善手』も、スポンサーの事業方針に対する非現実的な干渉であり悪手」
たしかに悪手だけど。でもYouTubeニコニコ動画のような「技術的実力行使」をしないと、権利者は何もしようとしないから、私には「悪手の中の最善手」に見えるなぁ。
テレビ局がまねきTVを強引に潰す努力とかをみると「国民は蒸気機関車に乗って街頭テレビや映画館でニュースを見てれば良いんだよ。それ以上は便利なメディアに進化するな」というネオ・ラッダイト運動のような後ろ向きさを感じる。』

zsphere
窪田先生は、梅田先生の立場上から、ニコニコ動画で見たという記述に対して「配慮すべき」と勧められたのだと
了解していますが、しかし梅田先生がニコニコ動画でこの対局を見た事実は変えられません。
その点を、ただ隠すのが良策という立場は、著作権的にグレーといわれ続けている
ニコニコ動画のようなコンテンツについての問題を、ただアンダーグラウンドに追いやるだけのスタンスともなり得ます。

実際、普段将棋に興味を持たない層があの動画を見て感動し、将棋に興味を持ったというケースもあるでしょうし、
仮にNHK自らがあの動画をネット上に公開したとして、今回のニコニコ動画ほどの反響が起こったとは思えません。
問題は、ニコニコ動画著作権的に問題があるにも関わらず、良かれ悪しかれ多くの人が「見てしまう」場であるという事です。
これは、ただ理を通しているだけでは解決しない問題だと思うのです。


今の著作権法的にさまざまな問題があろうとも、ニコニコ動画Youtubeは既に存在しており、それを通して映像を見るという人がいること。これらが、もはやアンダーグラウンド的な状態ではなく、多くの人が認知する状態になってしまっていること。


このような動画共有サービスがなければ、技術的には可能であるにも関わらず、さまざまなコンテンツが埋もれていくままなのをただ指をくわえてみているしかなかったという今までの流れ。そういう状況でも、アングラ的にコンテンツがやりとりされているという状況は存在していたが、技術的に可能なことを従来の法で押さえつけるのが限界に達して生まれてきたのが、Youtubeニコニコ動画



人々はただ与えられた物を見るだけでは満足できなくなった。ただ受身で与えられたコンテンツを見る状態から、自分で見たいコンテンツを探してきて見る状態への変化。誰だって自分が好きなコンテンツを見るほうが楽しいに決まっているから、この流れは止まりそうに無い。



どこまでの引用が許されるのか


多くのネットユーザーは、コンテンツを無料でばら撒きたいと思ってるわけじゃない。そのコンテンツが素晴らしいと思うから、多くの人に見てもらいたいと思って紹介している。明らかに今の現状にあっていない著作権を無理やり行使してコンテンツの流通を規制するのがいいのか、共存の道を模索していくのがいいのか。



このブログでも、Youtubeニコニコ動画へのリンクを貼ることが多くなった。これは、今の著作権のあり方はおかしいと思ってる一人として、素晴らしいコンテンツはもっと多くの人に知って欲しいと思ってる一人としての行動。今の著作権法に照らし合わせると、まずい面もあるってのは重々分かってはいるが、行動で示さないと変わらないこともある。



このブログで書いていて非常に好評だった「ビリーズブートキャンプ」の日記、上部のリンク先から見てもらうと分かると思うけれどDVD中の映像を多用してたりする(入隊記録(2)以降)。もちろん文章だけで伝えるという手段もあるけど、映像がある、ないの違いは何かを紹介しようとするときにものすごい差となる。画像があったからこそ、あそこまで「ビリーズブートキャンプ」の魅力を分かりやすく伝えられたと思っている。

他のブログエントリを紹介するときに引用を多用した方が分かりやすく書けるように、ある商品を紹介しようと思ったら画像や映像を引用できた方が分かりやすく書ける。



一方、最近書いた「天まで突き抜けたアニメ「天元突破グレンラガン」 - 北の大地から送る物欲日記」というエントリ。

こっちは、あえて一切画像の引用はなしで書いた。「天元突破グレンラガン」は非常に気に入ったアニメで、もっと多くの人にも見てもらいたいと思ってエントリを書いた訳だが、画像の引用なしで書くのは非常に難しかった。すでにこのアニメを見た人には同意してもらえても、まだ見たことのない人にどこまで魅力を伝えられただろうか?と思うと、正直書き足りなかったりする。


現在では、映像・画像の引用を認めない企業がほとんどだが、果たしてそれが本当に正解なのだろうか?



著作権のあり方がどういう状態になればいいのか、というのは、ネットという今までになかった情報伝達の方法ができた今、ものすごい勢いで落ち着くべき場所が探られている状況なんだと思う。


この状況で、今までの著作権のあり方にこだわり続けて何もしない、という選択肢は自分的にはありえない。どういうあり方がいいのか、いろいろ見ながら考えるし、それをブログでも書くし、自分で正しいと思った使い方を現在の著作権法より優先させることもある。もちろん、削除してくれと権利者に言われればそれには従うが。



もう状況は動いてる。誰でも見ようと思えば見ることができるYoutubeニコニコ動画、ブログという個人の情報発信の場がコンテンツのあり方をどう変えていくかは、自身も参加しつつ考えていきたい大きなテーマのひとつ。