ユーザーも真剣に考えなくてはならない著作権のあり方


公開練習は違法です - さぼり記」を読んで。

初音ミクによる既存楽曲のカバーを公開することが違法であることについての考察記事。


カバーではなく、オリジナル楽曲を歌わせ、それがネットで広まっていくことに制限をかけられなかったという環境もあって、ニコニコ動画に端を欲した初音ミクのブームは、大きな広がりを見せました。公開された動画がニコニコ動画からYoutubeなどへ場を移しつつ広められたり、それをブログにおいてブログパーツや紹介記事で広める人が出てきたおかげで、今までの音源ソフトでは見られなかった形でブームが広がっています。


しかし、このブームの広がりを全面的な無償公開から、作者に利益が還元される形にしようとした途端に、いろいろと問題が生じてきたようです。
CloseBox and OpenPod > 初音ミク、JASRACデビュー : ITmedia オルタナティブ・ブログ

「みくみくにしてあげる♪【してやんよ】」という、初音ミクブームを作り上げる立役者の一つとなった有名曲が、作者→ドワンゴJASRACという流れで著作権管理委託されることとなった結果、これからはJASRACを通してでないと利用できないことになりました。
秋葉に棲む - みっくみくがJASRACされた?!(訂正というか続き?)


その辺について、初音ミクをリリースしているクリプトン社の見解。

こんばんは、クリプトン伊藤です。「みくみく〜」のJASRAC登録の波紋が拡がってきましたので、説明責任を果たさせていただきます。

まず、私がこの事実を確認したのは、12/17(月)の午後、CloseBox and OpenPodからの記事でした。直ぐにドワンゴ・ミュージックパブリッシングという会社の連絡先を調べ、電話しましたが、担当者が不在のため折り返しの電話を待ちました。夕方5時半過ぎに連絡を戴きましたので、この件について説明を求めました。「何故JASRACに登録する必要があったんですか?」と。また、「アーティスト:初音ミク」という表記についての事前の相談はありませんでしたので、それに対する抗議です。

初音ミク」という1つの音楽ソフトを通じて、才能あるクリエイターに正当な注目が集まることは大変喜ばしいことです。その様なクリエイターが多く育って、そして正当な対価を得られるようになることが、次のクリエイションを産むためには必ず必要です。しかし、現状の著作物利用料の分配の仕組みは、JASRACなどの仲介を得てはじめて実現するようです。例えばカラオケで「みくみく〜」が配信されてますが、どれだけ歌われようが、JASRACなどの管理がなければ悲しいかな分配ゼロです。CGMの「入り口」として「ピアプロ」サイトを構築してますが、どうやら「出口」もしっかり用意せねばならない気がしてきました。

今回の件は、ドワンゴ社とも話し合う余地がありますので、弊社としても出来るだけ頑張ってみます。

初音ミク」表記でJASRACに登録してしまったドワンゴの見解。

ただ、以前より外部に対するアーティスト名の表記につきましては、クリプトン社様から「作家名+featuring初音ミク」との表記を行うよう依頼を受けておりましたが、社内連絡の不徹底からJASRAC登録にあたりアーティスト名が「初音ミク」として登録申請がなされてしまいました。
その結果、当該楽曲の実演家名が「初音ミク」としてJASRACの検索サイト「J-WID」に掲示されてしまいましたことを、クリプトン社様その他関係各位に深くお詫び申し上げます。
ニコニコ動画からは、多数の隠れた才能が開花しており、これらの優れた作品が世に受け入れられ、支持を受けることは非常に喜ばしいことであると当社は考えます。しかし、これらの作品は、作者の英知の産物でありこれが一般ユーザ−の私的交流の範囲を超え何らかの形で商品化された場合に、作者にその対価が支払われることは当然のことであると考えます。
ただ、現在の著作権管理団体の規約上は、私的交流における使用と商業目的による使用の定義・区別が明確ではなく、当該作品をリスペクトし、実質的にはユーザー間での交流目的での使用においても使用料が発生してしまう場合があることも、現実であると認識しております。特にネット文化が発達してきた現在においてどのようなルールにもとづいて著作物の管理を行うべきかは今後ユーザー間でも大いに議論すべきテーマであり、当社もまたJASRACをはじめとする著作権管理団体とも積極的な議論を行ってまいりたいと考えております。

(引用中の太字改編は私が行っています)

実際の権利者側がフェアユース的に使う分には自由に使ってもらいたいと考えていたとしても、現状の著作権管理団体の最大勢力であるJASRACではそういう形での利用はできません。いいかげん、この辺のしくみをしっかりと考え直すべきだと思うのですが。


ユーザー側がニコニコ動画発祥のコンテンツを過度に「みんなのもの」扱いすることについて危惧した意見も。

それよりも気にしていることがひとつ。
ニコニコ発祥のコンテンツで人気が出たものってさあ、
著作権者の意思とは無関係に勝手に「みんなのもの」にされてね?
上の事件もこの「みんなのもの」意識が余計に大火事にしてる気がしてならないんだが。


誰かの作ったコンテンツは誰のものかって、それはやっぱり作った人の物なんです。ただ、それを商用利用も考えて公開しようとしたときに、著作権やそれを管理している管理団体の現実(ネットで広範囲低コストの流通が可能になったこと)に即していない部分という問題点が浮き彫りになります。



実際に自分のホームページで、JASRACと契約した上でカバー曲を公開するという試みをしている人もいます。

なぜ私はJASRACと契約するに至ったか - 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 [ITmedia オルタナティブ・ブログ]
なぜ私はJASRACと契約するに至ったか(続き) - 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 [ITmedia オルタナティブ・ブログ]

実際に公開されているサイトは「初音ミク sings」というサイトです。過去の名曲をセレクトして、初音ミクでカバーしたのをストリーミングで公開されています。



JASRAC管理でカバー曲を配信するときの値段は以下のサイトから該当する使用料を支払うことになります。
JASRACネットワーク課

上記のサイト「初音ミク sings」の場合、非商用でのストリーミング配信で、公開している曲数から月額1000円の支払いをしているようです。
JASRAC許諾サイトのアフィリエイトについて - 栗原潔のテクノロジー時評Ver2 [ITmedia オルタナティブ・ブログ]


ただ、サイトでアフィリエイトなどを行っていた場合は、商用目的とされてしまうため、使用料は一気に跳ね上がります。その料金は上記サイトと同じストリーミング公開の場合で月最低料金が5000円。

音楽の場合、月間の情報料及び広告料等収入の3.5%とあるので、収入がある場合はその収入の3.5%が5000円を超えない限り高い使用料を支払うことなります。ちなみに収入の3.5%が5000円になるのは、収入が142857円/月になってやっとです。この3.5%という数字が妥当かどうかは置いておいて、月の収入が142857円以下の場合には不当に高い利用料を取られてしまう現状な訳です。

本当に自分が払った利用料が、自分が公開している楽曲の権利者の元に届けられているのかがはっきりしないのに、月額最低料金が5000円も掛かるというのに納得できる人はほとんどいないでしょう。いったいどこの何にそんなにお金がかかるのか。



著作権を巡るさまざまな問題が浮き彫りになってきた今、自分には関係ないや、と対岸の火事のように見てるだけではすまない段階に入ってきています。

著作権が時代に逆行して厳格化されれば、多くの衝突を生み、コンテンツ利用のあり方が大きく後退してしまうでしょう。そうならないように、ユーザー側もしっかり声を上げていかなくてはなりません。