本とブログの違い

日々、あちこちで読んでいる文章をどこから読んでいるか?という点で言うと、ここ最近では本とブログであることは間違いない。そんな本とブログは何が違うのか?って話。


本とブログ、それぞれの特徴


本とブログの違いを考えてみるにあたって、まずそれぞれの特徴を書き出してみる。

    • 紙媒体に文章が書かれたもの
    • 文章を書き残す形としての本の歴史は長く、あらゆるジャンルの本が存在している
    • 文庫本サイズから百科事典サイズまでいろんなサイズがある
    • 文章だけでなく絵や写真、図表なども載せられるが動画や音声は基本的に無理
    • 本を取り扱う公共機関である図書館が存在している
    • 自費出版もあるが、本を作るにはそれなりの実績が必要
    • 存在量は売れた数、作られた数によるので、人気や実績によって存在量が異なる
    • 紙媒体なので、場所を問わず持ち運べ読むことができる。
    • 版を重ねる度の誤字の修正、問題箇所の削除などはあるが、基本的に書いた時点のまま
    • 紙面は限られるので文章の量にはある程度の限界がある
    • 執筆、チェック、印刷などの各種工程を経て作られるため、書いてから本になるまでには若干のタイムラグがある
  • ブログ
    • ネット上に存在し、PCや携帯などで読むもの
    • ネットの成長とともに発展してきたもので、ブログと呼ばれる前の形まで含めてもせいぜい十数年の歴史
    • 本と同じくあらゆるジャンルがあるが、カバーするジャンルには若干の違いがある
    • 文章だけでなく絵や写真、図表、動画、音声までも載せられる
    • リンクによってウェブ上の他のブログやサイトと自由に繋がることができる
    • コメント、トラックバックなどによって読者とのやりとりが可能
    • 多くの無料ブログサービスが存在し、誰でも自由に作ることができる
    • 基本的に時系列によるログの羅列のスタイルをとる
    • 後からの修正、削除などは容易に可能
    • 書いてアップすれば、すぐに閲覧可能
    • 基本的に文章の量に限界はない*1

本とブログで異なる点


本とブログにおけるそれぞれの特徴を書き出してみて、そこから両者の違いを整理してみると、以下のようなものが挙げられる。

  • 作成するための容易さ

本は紙媒体というコストがかかるものを使い、更に印刷などの工程を必要とするため、作成するためには資金が必要となる。出版社が本を出して売れると見込むだけの業績、実績、知名度などがある場合でないと本を作成するのは難しい。ブログは多くの無料サービスが存在し、ほとんどコストをかけずに開始することができる。有料ブログサービスやレンタルサーバーなどを利用したとしても、それほどコストはかからない。

コストから見ると本よりブログの方が圧倒的に簡単に作成することが可能。

  • リアルタイム性

本は一人で作り上げるものではなく、著者、編集者、それ以外にも多くの人の手によって作り上げられるものだけに、記事を執筆してから本になるまでにはある程度のタイムラグが存在する。ブログは記事を執筆した後、アップした直後からすぐに読むことが可能となる。

本の場合、リアルタイム性に欠ける分、多くの人のチェックが入る分の完成度の高さがあり、ブログは完成度こそ低い傾向にあるもののリアルタイムに記事を更新していくことが可能である。

  • 情報量の違い

本に載せられる情報はメインである文章以外に、絵、写真、図表くらいまでだが、ブログの場合はそれらに加え、音声、動画、場合によってはブログ上で動作するアプリケーションまで公開が可能。

  • 閲覧の自由度

本は紙媒体に記録されているため、それを持っていける場所ならどこででも閲覧可能。ブログはそれを見るための電子機器(PCや携帯など)を必要とし、更にネットに接続できる場所という制限がつく。

  • 読者とのコミュニケーション

本の場合、読者が著者に手紙などの形で感想を伝えることが可能だが、それに対する著者からのレスポンスはほぼ望めない。ブログの場合はコメント、トラックバックなどで直接著者に対してコミュニケーションをとることが可能。

  • 独立性

本は基本的にその本自体で完成しており、他の本の内容を引用していることがあったとしても、その本だけで独立した内容になっている。ブログも基本的にはそのブログの文章で成り立っているが、リンクによって自由に他のブログやサイトと行き来可能なため、一つの話の展開が複数ブログにまたがって行われるなんてことも十分にあり得る。


本とブログはどうなっていくのか?


ここまで、本とブログの違いをいろいろ書き連ねて来たが、これから先、本とブログの未来はいったいどうなっていくのだろう?



さまざまな違いを見て行くと、同じ文章を記録して大勢に読んでもらうための手段としての本とブログではあるものの、それぞれに可能なことは結構異なっており、今後すぐにこれらが融合してしまうようなことはないだろう。

本とブログの違いというのは、紙媒体かネット上の電子情報かという根本的な部分だけに限らず、記録されている文章の完成度が本は一度完成したらなかなか修正が効かないものだけに高める必要があるのに対し、ブログでは完成度よりもリアルタイム性が重要視される傾向にある。だから、完成された一つの主張を読みたいなら本になるし、ある主張が構築されていく様だったり議論される様子を読みたいのならブログになる。



また、収益という点でいうと、本は実際に値段がつけられて売られているものだから、その売れ行きに従って収益が発生するが、ブログの場合は基本的に無料で読める存在であり、ブログのアクセス自身が収益を生むことはほとんどない。アクセス数が多い一部のブログでは、アフィリエイトと呼ばれるような広告を掲載することで収益を上げることも可能だが、それは本文のついでに広告を見てもらう、場合に寄っては利用してもらうというもので、ブログの本文自身が収益を生むという構造ではない。投げ銭のような、自分がいいと思った文章に対価を支払う様なしくみも登場してはいるものの、利用者はごく一部に限られているのが現状である。



一般人が気軽に作成し、自分の主張や記録を自由に作成できるブログによって、いままで自分の主張を読んでもらえることが無かったような人が声を上げることが可能になり、本というのはある程度読者を得られると見込める場合に、そこから収益を生むための手法として存在し続けるという棲み分けが今後しばらくの間は続くのではないだろうか。


本とブログにまたがる存在


このように違いがある本とブログではあるが、両者にまたがるような存在もいくつか存在する。



幾度となく何度となく消え去っては、また商品化され、というのを繰り返しているのが、本を紙媒体ではなくPCや携帯、専用機器などで読む形としてネットで配信する電子ブック。紙媒体を使わずに電子データ化することによって、「物理的な場所を取らない」「在庫切れ、絶版など入手困難にならない」というメリットがあるが、「読むための装置を必要とする」「紙媒体の本ほどの親しみやすさがない」「提供される書籍の数が少ない」などの点で、まだ一般層に普及するまでには至っていない。



逆にネット上で本のような完成度の高い情報のまとめのような形を構築しようとする手法としては、wikiが挙げられる。いまやネットを利用する人なら知らない人はいないであろうウェブ上に有志の手で作成されている百科事典、Wikipediaは言うに及ばず、それ以外のさまざまな分野においてもwikiを使って作られているまとめサイトなどを見掛ける。一昔前なら、それなりに専門知識がある人でないと利用できなかったwikiも、いまではブログのように無料サービスなどが登場しており、簡単に利用することが可能になっている。

本の場合は著者が書いた文章を編集者がチェックするという形を取るが、wikiにおいては参加者の誰かが書いた文章を他の参加者がチェックするという形を取ることが多い。



今は明確に区別できる本とブログではあるが、両者にまたがるような存在が多く出現してきたり、収益の構造が今とは異なる形もでてきたりするならば、数十年後くらいには「昔は本とブログって別れてたけど、いつのまにか融合してたよな」なんて未来もあるのかもしれない。

*1:一記事あたりに限界があっても分割して記載すれば記録可能なことが多い