ネット上のサービスを現実の何かに例えることの限界


一般常識・礼儀とブログマナー - ☆女の徒然草☆ - Yahoo!ブログ」を読んで。

記事の大半はYahoo!ブログ独自の機能に関する話なので、Yahoo!ブログユーザー以外には関係のない話なんだけど、ブックマーク(と記事中では表記されているが、正確にはソーシャルブックマークのこと)に関しては交わる部分でもあるので、そこら辺について。



記事中の主張はブックマーク禁止を表示しているサイトやブログについて、公開ブックマークを行うべきではない、というものなんだけど、そこでいくつか例え話が出てきます。

また、ブックマークに関してですが、本来のブックマークとは本にはさむ、しおりのことを言います。
ここで本来のと書いたのは、Wikiなどの内容から引用して反論する方が居られることを想像してそのように書いているのです。

しおりである以上、その機能は個人の趣味嗜好によってなされるものとなります。
そして、ブックマーク禁止を表示しているサイトやウェブページ、ブログについては公開ブックマークを行うべきではないと考えております。

そのように書いているのです。
図書館で利用者が勝手にしおりを挟んでいるようすを想像してください。
施設によっては利用者が数万人、あるいは数十万、数百万人もの人が利用して、それぞれの利用者が勝手にしおり(ブックマーク)をすると、どのようなことになるでしょうか。

きっと図書館はしおり(ブックマーク)であふれかえり、しおり(ブックマーク)に書かれた内容がその図書館においてある利用物となってしまいます。

これでは本来の図書館としての役割を果たすことは困難でしょう。

また、何もかもが自由であるとして人の家にまでしおり(ブックマーク)を貼り付ける行為は社会での一般常識を逸脱した行為といわざるを得ません。

ブログは、企業などの団体が書いているもの以外、すべて個人の家と同じです。
門戸は開放されていますが、それはほかの方との交流を容易にするコミュニティーの手法であるだけで公民館や図書館などの公共施設とは異なります。

国土地理院の地図に個人の家が記されていない(ブックマークされていない)のと同様に、個人の所有物(ブログ)に対するブックマークは行うべきではないと考えております。

http://blogs.yahoo.co.jp/yoshimysan/20429154.html

この引用中に出てくるブックマーク、公開ブックマークというのは「ソーシャルブックマーク」のことを指しているのですが、元々はブラウザ上のブックマーク(IEならお気に入り)→オンラインブックマーク(ネット上にブラウザのブックマークを保存するサービス)→ソーシャルブックマーク、と発展してきたものです。

大元のブラウザのブックマークは、その機能が本にはさむしおりに似ていることからブックマークと名付けられたのだと思いますが、IEではお気に入りと称されているように、「ネット上のURLを保存する機能」を「ブックマーク」「お気に入り」と名付けただけに過ぎません。



オンラインブックマークはブラウザのブックマーク機能をネット上に保存するというブラウザの一機能のデータをオンライン上で管理できるというものでしたが、これがソーシャルブックマークへと発展すると、かなり違う意味合いを持つこととなります。


ソーシャルブックマークができた経緯


ネット上に存在するサイトやブログ、そしてそれらの中に存在する記事の数は爆発的な勢いで増加を続けており、気になる記事をいちいちブックマークに記録しているのでは到底追いつかなくなりました。

従来のブラウザのブックマークやオンラインブックマークは、サイトやブログなどのトップページを保存するのには便利な機能でしたが、その中の個別の記事を記録しようと思うと、その数が膨大となってしまって整理が追いつかなくなり、収拾がつかなくなります。



自分が見た気になる記事のURLを記録しておいて後から再利用したい、そういう目的で作られたオンラインブックマークの発展版がソーシャルブックマークで、これは当初からネット上の個別ページごとをブックマークすることを想定し、タグ・コメントで整理・分類が可能になっています。(細かい仕様はサービスごとに異なりますが)

更にブックマーク情報を他のユーザーと共有することで、多くの人が興味を持ったページ、話題になっているページ、あるタグ分野における新しい情報ページ、などを発見、閲覧できることもあり、ブックマークを利用、公開しているブックマーカー達だけではなく、他の一般ユーザーが情報を求めてソーシャルブックマークのページを閲覧する、という形での利用も行われているサービスです。


新しいネットサービスを現実の何かに例えるのは限界がある


上記の引用では、ブックマークをしおりに例え、ブックマークが増えることで図書館がしおりであふれかえり、その図書館としての役割を果たすことが困難になると説明されています。

でも、ネットというのは図書館に似ていたとはしても現実世界における図書館ではありません。



そのしおり(ブックマーク)はソーシャルブックマークのサイト上に保存、蓄積されるので、いくらしおりを挟まれても元のサイト上がしおりで溢れることはありません。(元のサイトが自らの意思を持ってそのしおりの数やしおりに書かれたコメントを表示することは技術的に可能ですが、溢れることにはならない)

また、あるページにつけられたしおり(ブックマーク)の一覧をソーシャルブックマークサイト上で見ることができますが、それはあくまであるページをブックマークしたユーザーと彼らがつけたタグ・コメントの一覧であり、それが元のページを勝手に上書きしたり、消したりしてしまうことはありません。

ブックマーク一覧だけを見て元のページを理解したような気になってしまう早とちりな人もたまにはいますが、基本的にはソーシャルブックマークのブックマーク情報を見た人は元ページを見にいくもの。つまり、あるページについて、そのページに興味を持つブックマーカー一覧+コメントという、あるページの解説ページが外部にできたようなものであり、そこを経由して元ページに訪れる人もたくさんいます。



ソーシャルブックマークは、ネット上に存在するあらゆるページを人々の興味という視点で分類、整理してくれるサービスであり、これは存在するさまざまなページへの意味あるインデックスを作成するという意味合いで有意義なものです。

また、何もかもが自由であるとして人の家にまでしおり(ブックマーク)を貼り付ける行為は社会での一般常識を逸脱した行為といわざるを得ません。

http://blogs.yahoo.co.jp/yoshimysan/20429154.html

ソーシャルブックマークは、各ユーザーが自分のブックマークした情報をソーシャルブックマークのサーバ上に保存しているもので、人の家と称されている誰かのサイトやブログ上にブックマークを貼り付けるものではありません。

あるページをブックマークし、タグやコメントを残すという点を広義に捉えると、ブログ上で、あるページを紹介することとほとんど差がありません。



それを自らがブックマークされたくないという考えから拡張して、社会で一般常識を逸脱した行為とまで言ってしまうのは、明らかに言い過ぎです。


自分の考え・希望と一般常識との違い


よっしみ〜☆さんは、

批判されたい方はご自分のブログなりウェブページを使って、
この記事やブログへはリンクをせずに、ご自分の主張を書いてください。

http://blogs.yahoo.co.jp/yoshimysan/20429154.html

と書かれていますが、それはよっしみ〜☆さんの希望であって、「大人のマナー」や「一般常識・礼儀」などではありません。

それは、一般常識や礼儀であると説明されている内容が、誤解に基づいたものであるから。



リンク禁止、ブックマーク禁止などを個人が希望・主張するのは自由ですが、逆にリンクしてサイトを紹介したり、ブックマークしたりするのも自由です。それがネット上における自由というもの。

「本人の嫌がることはしない」というのはモラルとしてありだとは思いますが、自分=世の中の全ての人ではないことに注意。



ある人の「リンクしないで欲しい」に対して、「リンクして紹介したい」と思う人もいます。片方の嫌がることってのが相手の行いたいことになっている関係なんてたくさんあります。



ネット上で何かを主張するときは、それはお願い以上の効力をもつことはありません。

もし、その主張が相手の行動を制限するものだとしたら、それは相手の行動の自由を妨げていることとなり、それがまかりとおるのなら、自分が自由に行動する自由もまた誰かによって妨げられることになってしまいます。



また、何かをお願いするとしたら、なぜそうしなければならないのかを、正しい理解と説明によって説くものであり、自分の個人的な考えを一般常識という言葉に包んで相手に強要する物ではありません。