日本文化を観光化するために必要なこと

東京都中央卸売市場築地市場中央区築地5)のマグロの競り場に、外国人観光客が多数押し掛け業務に支障が出ているとして、都は各国大使館やホテル、旅行会社に、12月中旬から約1カ月間、競り場の見学中止を通知した。築地のマグロ競りは外国人の間でも「ツナ・マーケット」と呼ばれ、秋葉原、浅草と並ぶ3大人気スポット。早朝から500人近くが訪れる日もあるが、マナーを守らない人もいて関係者から不満の声が出ていた。

http://mainichi.jp/select/today/news/20081203k0000e040078000c.html

京都の花街・祇園甲部で、芸舞妓(まいこ)の人気が過熱し、外国人観光客やアマチュアカメラマンが取り囲むため、住民らがパトロールする事態になっている。
 テレビや映画で芸舞妓が取り上げられる機会が増え、被害がエスカレートしているという。京都市などは、海外向けホームページで「Donot follow Maikos in the streets(舞妓さんを追いかけないで下さい)」などと、異例の呼びかけを始めた。

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20081220-OYT1T00415.htm


東京築地市場のマグロ競り場に、京都祇園の芸舞妓見学(追っかけ?)と、日本の文化を海外の外国人観光客が大量に見に来ることでトラブルになってしまっているというニュースがここ最近、いくつも報道されています。


資源もない、土地も無い国である日本にとって、観光ってのは大事にしなければならない重要な産業のひとつで、日本の文化を観光によって多くの世界中の人に知ってもらうのはいいことなのですが、あまりに人気になるあまりに、元々の地元の日本文化を脅かすようになってしまっては本末転倒。



海外に行って、その国の文化を見学してくるときは、その国のマナーに従うなんてのは当たり前のことですが、何をしてはいけないのか?というのは案外分からないもの。だって異文化なんだから。

そこで守るべきマナーやルールはこうですよ、というのをしっかり提示してもらって、観光客の側はしっかりそれを守りつつ見学する、ってのが互いに気持ち良く交流するために必要な形。



例えば、北海道の温泉地では、日本の銭湯や温泉のように大人数で共同のお風呂に入るという文化がない地域から観光にやってきた外国人向けに、温泉の入り方をまとめた小冊子を作成して配っている取り組みを行っているところもあります。

*「裸で頭にタオル…」マナーを紹介*北海道運輸局が作成
 北海道運輸局が外国人観光客向けに作成した、温泉の魅力や入り方を紹介した英語版の小冊子が人気だ。サミットの際にも、各国代表団が宿泊する洞爺湖や登別のホテルでも配布する予定。札幌国際プラザの外国人らが監修したきめ細かさが人気の背景で、西胆振の関係者も学ぶべきところは多そうだ。
 A5判十四ページで、カラー印刷。二月下旬に一万部をつくった。欧米からの観光客が水着のまま温泉に入ろうとすると、日本人男性が止めに入る。「温泉は裸で入るもの。タオルを頭の上に乗せて」(本文は英語)などなど。マナーを分かりやすいマンガで描いた。
 温泉の歴史や効能も紹介。浴衣の着方や、ロッカーの使い方、体を洗ってから湯船に入るなど基礎的なこともていねいに解説している。「大浴場」や「おかみさん」などの意味も説明し、「いい湯だな」「極楽極楽」など温泉で使う基礎的な日本語の説明も加えた。

http://www.eco2008.jp/news/newscontents/?id=190#

この記事で触れられているガイドブックは実際に見たことがあるのですが、とてもよくできています。



英語で書かれた温泉ガイドブック。


日本以外ではめずらしい温水洗浄便座(ウォッシュレット)の使い方や、浴衣の着方などを図解で説明。


温泉に入るときのマナーも4コマ漫画で分かりやすく解説。



この英語版温泉ガイドブックは以下の北海道運輸局のサイトからダウンロードすることができます。
北海道運輸局ホームページ−英語版温泉ガイドブック



こうやって、ガイドブックを作成して、日本文化を紹介するとともに、見学のときに守ってもらいたいルール、マナーを説明するってのはいい方法だと思います。

また、外国人が持って来ているガイドブックの制作元に、現地で守ってもらいたいマナー・ルールを掲載してもらえるように働きかけるっても重要かと。上述のガイドブックもweb上でダウンロード配布しているのなら、それを紹介してもらえば、事前に観光客が自分たちでダウンロードして見てもらえて、印刷のコストも安く上がるかもしれません。



また、せっかくたくさんの人が見学に来ているのなら、現地の仕事の邪魔にならずに見学できるルートを作成するとか、見学・体験ツアーみたいなものを企画してしまうってのもアリなのかもしれません。

日本国内でも、全然接点が無かった分野からの観光客をうまく取り入れて、地域活性に生かしている例もいくつかすでにあるように、うまいこと観光として盛り上げれば成功できる場所なんてのは、結構たくさんありそうな気がします。