本を取り巻く収益構造の未来

大ヒット続ける「スタバ本」の新たな発想:日経ビジネスオンライン」を読んで。

スタパ本? スタパ斉藤の本??とか思って読んでみたらスタバ本とは「スターバックス・アートブック」のことでした・・・。とかいう勘違いはさておいて、出版とその収益にまつわる興味深い話題の記事。

1. スタバ本を書店・コンビニ配本で販売する。
2. 定価を600円とすると、購読者は本書についている「ビバレッジカード」を持ってスターバックスにいくと、600円分のお好きなドリンクが飲める。
 一見しただけでは、普通のクーポン券のように見えるが、実体の構造は、かかわる人がすべてハッピーという、世界に類のない独自の構造を持っている。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20111221/225498/?P=3

要は「今までの書籍の収益構造の中から広告宣伝費の部分を無くす」「本の価値にスポンサー企業の商品を提供するという付加価値をつける」ことで、購読者、販売店、流通、出版社、スポンサーの全てにうまく利益や価値が回る新しいしくみ。



これを見て思ったのは、紙媒体の本というのは「読者、販売店、流通、編集、印刷、広告宣伝、著者」など、さまざまな立場の人が関わって実現している訳だけれども、電子書籍の本となると究極的には「読者、著者」しか残らない形もありうるということ。



コンテンツを通じた収益構造の中に入り込むには、なんらかの役割でそのコンテンツの成立や存在に役立つ必要がある。紙媒体と電子書籍とで、上述のさまざまな立場の意味合いを考えてみるとこう。

立場 紙媒体 電子書籍
読者 コンテンツを読む人 コンテンツを読む人
売店 書店・通販業者 配信サービス
流通 流通業者・問屋 配信サービス
印刷 印刷業者 配信サービス
編集 出版社 出版社・なし
広告宣伝 出版社・広告代理店 出版社・広告代理店・なし
著者 コンテンツそのものの作成者 コンテンツそのものの作成者

非常にざっくりとした意味付けだけども、要は電子書籍の場合には紙媒体時に必要とされていたさまざまな立場の存在が配信サービスに集約されていたり、無くても作成可能だったりしてるのがミソ。

もちろん、紙媒体と同様な制作構造で電子書籍化を行うことも可能で今現在はそういうスタイルのものが多いけれども、電子書籍の場合には「読者・配信サービス・著者」の3つで成立しうるというのが紙媒体と大きく違う部分。



いまでこそ、まだ電子書籍のフォーマットも発展途上で揺れ動いているし、広告宣伝なしに大きな部数を売り上げることは難しいため、電子書籍から大きく成功したという事例は少ない。しかし、今後、電子書籍フォーマットが確立され、より便利な配信サービスへと人が流れ、広告宣伝に相当する部分がソーシャルブックマークやweb系ニュースや書評ブログなどで置き換わっていったとしたら、本というものを取り巻く環境、その成立を担う要員が今とはまったく違う状況になっているかもしれない。