投げ銭を投げて受けて、また考えてみる


2005-08-09はてなブックマークを介した投げ銭が実装されて数週間。実際に投げ銭を投げて投げられてというやり取りを実際に体験した後で、投げ銭についてもう一度考えてみたいと思います。

投げ銭について語ること


今回のはてなブックマークを介した投げ銭のしくみが実装されてから2週間ちょっと経ったわけですが、実装直後の盛り上がりもひと段落して「投げ銭」について言及されることも減ってきています。


せっかく実装された投げ銭、このままだと言及が減って、使ってる人しか使わないという状態になりそう、と言うのもあって、実際に使ってみてどうだったかを踏まえてまた考えてみようかと思ったわけです。

はてなダイアリー内での言及数を見てもものすごい勢いで収束していて、一瞬の話題として消費されて今回はほぼ終わりなのかなと思うんだが、はてな投げ銭を大絶賛していた一部の人たちはそれでいいのー?と心から思う。

でも触れられていますが、一過性の話題で終わらせるのはもったいない。


投げ銭事情 私の場合


投げ銭っていったいどれくらい投げたり投げられてたりしてるの?と思う人もいるでしょうから、参考までに私の場合を紹介します。

ブクマNo. 記事タイトル ブクマuser もらったpoint合計 もらった人数
545117 投げ銭システムによって広まるインターネット大道芸人社会 9 121 4
547479 投げ銭システムをもっと考えてみた 4 11 2
545271 iTunes Music Store (iTMS)に関するよくある勘違い 29 2 1
552558 投げ銭に対して感じる温度差 9 51 2
558433 投げ銭、支払い方や手数料にまつわる考え 2 10 1
579277 はてなブックマークの可能性 13 10 1
579270 はてなブックマークのススメ 28 50 1
584429 はてなブックマーク利用心得十箇条を記す 10 10 1
596103 次なるはてな新サービスはコレだ! 18 40 2
305 15

投げ銭を頂いた15回中 アカウントあり:5回(200pt) 匿名:10回(105pt)

7記事、計240pt


投げ銭を頂いた方、ありがとうございました。ブックマークされる、投げ銭を頂くというのはいままでなかった読み手を感じられる手段で、あぁ自分の書いた文章が人に読まれてるんだなぁという実感がわきます。

また、私が投げ銭を投げた記事、ここではあえて載せてはいませんが、参考になったり面白かったりと感銘を受けた記事を書いてくれた方々、ありがとうございます。非常に楽しませてもらったお礼として投げ銭を送らせてもらいました。



私の場合、投げ銭についての記事をいくつも書いていますから、投げ銭を受けやすい状況だったのかもしれません。でも、はてなブックマークでブックマークされるような記事だと、まぁ満遍なく投げ銭を頂いているのかな? 事実、iTMSに関する記事、はてなブックマークに関する記事、はてな新サービスを妄想するネタ記事(笑)に関しても投げ銭を頂いています。


このいろんな記事に投げ銭を頂いている、というのは人それぞれ投げ銭を投げてもいいな、と思えるツボが違う、つまり多様化したコンテンツにいろんな人が投げ銭を行う(≒購入する)、ロングテール現象の一種として考えられないでしょうか?

■シリコンバレーからの手紙 103 ネット世界で利益を稼ぐ「ロングテール現象」とは何か


一日数十万アクセスを稼ぐようなサイト(書籍で例えれば本屋で平積みされているような本)でもなく、たかだか一日数百アクセスのサイトで書かれた記事が、投げ銭という形で対価を受け取ることができるというのは、まさに投げ銭が導入された時に感じたコンテンツ評価の新しい形を示している、と言えます。


コンテンツに対する対価としての投げ銭


投げ銭に対して、趣味でやるのだったら無償でやるべし、というような意見をいくつか見て、そういうことではないような・・・ともやもや思ってたところ、あぁこれだ!と思える考えに出会いました。

おそらく、自分の行う作業に対価が支払われる「労働」の対義語として使われているのだろうと推測するんだけど、じゃあ、趣味に対価は支払われるべきではないのだろうか?

投げ銭というシステムが、どういう思想(と書くと仰々しいが)の元に用意されているかはわからないけど、少なくともid:hatenadiaryの,投げ銭では、趣味であろうがそうでなかろうが、はてなダイアリー上にある文章の価値を評価するもの、という意味のものだろう。だから、投げ銭に関して、趣味だからどうだから、というのは見当違いなんじゃないだろうか。執筆者の行為に対して支払っているんじゃない、文章を評価しているだけのことなんだ。もし投げ銭というシステムがこういう考えの元に存在していて、それをより明確にするには、僕は4/5付でも言ったけど、どの文章に対して投げ銭するかというシステムが必要だと思う。


投げ銭はあくまでコンテンツに対しての対価として渡すもの。上の文章における「どの文章に対して投げ銭するかというシステムが必要だと思う」を実装したのが、今回の「はてなブックマークによる投げ銭システム」だと思います。


労働と趣味の違い


労働というのは、雇う側と働く側の間に結ばれた「この仕事に対してこの対価を支払います」という契約。契約であるから、対価の支払いが先だろうと後であろうと働く側は雇う側の要求する仕事を行わなくてはなりません。


一方、趣味の場合は、コンテンツを作成する側と受け取る側とには上記のような契約関係はありません。コンテンツを作成する側は自分の満足のためにコンテンツを作成し、受け取る側は自由にそれを受け取れます。

受け取った側が作成する側に対して「良かった」「楽しめた」「参考になった」などの意を返すコミュニケーションのひとつとして投げ銭が存在しうるんじゃないでしょうか?


この場合、投げ銭はあくまでコンテンツに対する評価(対価)としてのものなので、コンテンツの作成側は受け取り側に何ら責任を負う必要はありません。コンテンツ先払い、評価(対価)としての投げ銭(またはコミュニケーション)後払い、ここでひとつのコンテンツを媒介とした関係は終わるわけです。

この辺について、以下のサイトで述べられている投げ銭の定義が非常に参考になります。投げ銭をしようと思ってる人に是非見て欲しいです。

4.ろじぱら的「Web投げ銭」の定義


また、趣味でお金をもらうことについて言及してる記事でid:yukattiさんの記事が参考になりました。

長々書いてきたんだけれどまとめると、趣味でお金をもらうことや趣味にお金を上げることはあってもいいんじゃないかと、まずこれが第一点。これまでも現実にあることで、決して変なコトでもないと思う。さもしいことでもないよと(と、もうそういうことやってきた人間が書いても説得力ないか)。
ただ、趣味の場合はお金のやりとりは価値のやりとりであるとともにコミュニケーションのツールとしての役割もあるのではないかと。つまりお互い、やれることをやりあうという関係であると、これが第二点。
だから、投げ銭が欲しいひとや投げ銭を受け付けても良いってひとには、投げ銭したくなったひとは投げ銭をする。
また、「わたしがやっていることに投げ銭いらないですよん」と思うひと、「投げ銭ご遠慮します。いらないです」と言明する権利があるし、そう言うことは間違っていないと思う。そしていらないですって言っている人には投げ銭しなくていい、てことなんですね。

リファが欲しいって人にはリファを、投げ銭を受け付けていますよって人に投げ銭をあげたければ投げ銭を。何もいらないって人には「良かったよ」という声でも想いだけでも。どんな形であれ、受け取った側が作成者に感謝の意を示していることには違いないのです。



また、コンテンツとそれに対する投げ銭というやりとりは、受け取り側が自分の評価に基づいて対価を支払う(後払い)ことができるという点でいままでなかった形であり、より良い物が正しく評価される、そんな社会構造へと変化する地盤を担う仕組みのひとつとして、更にもう今現在使い始めることができる仕組みとして、大きな可能性を秘めています。



自分の好きなものに対して、思っている評価を形として伝えたい人は、どんどん投げ銭を使ってみよう。


投げ銭が広まるためには


まだ投げ銭という仕組みを知ってるのは、ごくごく一部の人だけ。いろんな形であちこちへ投げ銭という仕組みを広めていきたいところです。

そして、投げ銭について知り、それが広まるといいなぁと思ったら、とにかくどんどん使ってみることだと思います。送るポイントは1ポイントでも100ポイントでも10000ポイントでも、自分がそのコンテンツに対して感じた評価をポイントに置き換えて送ればいいのです。投げ銭を投げるのは義務ではないから、送りたい時に送ればいい。

今回の出来事は「投げ銭」を始めたんじゃない。「投げ銭」を動かし、現実化させたのだ。インフラの整備が、インフラが追いつかなくてどちらかといえば理論を先行させるしかなく停滞してしまっていた物事をその先に進ませしめ、物事を日常化させようとしている。その瞬間、その「インフラ」の力を、これから確認できることこそが最大のポイントである。

にあるように、この投げ銭という「インフラ」の力はこれからどんどん使っていくことで見えてくるんだと思います。




何ポイントに置き換えたらいいか分からないなんてときは、何か他のモノと比較して考えると考えやすいかもしれません。あー、おにぎり一個くらいだなぁと思ったら100〜200ポイントくらい、うまい棒一本!と思ったら10ポイントてな具合に(笑)





【参考記事】

はてな各サービスの機能変更、お知らせなど - はてなブックマーク日記 - ポイント送信機能の追加について
jkondoの日記 - ブログ作者に投げ銭を

香雪ジャーナル - ぶくま投げ銭は「インフラの整備」、そして――はてなブックマークに投げ銭が実装されて――
このid:yukattiさんのエントリは投げ銭について考えるにあたって、昔の投げ銭が提唱されたあたりからどう議論されていったのかを追いかけるのに非常に参考になりました。