iPodとソーシャルブックマークに見る意識の改革
今では知らない人がほとんどいないくらい有名になったiPod。そして、まだネットに詳しい一部の人が使うくらいなソーシャルブックマーク。
一見なんの関係もないと思われるこの二つが実は結構似た側面を持っているんじゃないか?とふと思いました。
iPodに見る意識の改革
今を遡ること約4年前、初代iPodが発表されたとき、ネットでの感想は「HDD搭載のmp3プレーヤーなんて、壊れやすいしバッテリも持たないし、第一そんなにたくさんの曲を持ち運ぶ必要なんてないじゃないか」という批判的なものが大半を占めていました。
でも、iPodのすごいところは、今まで数曲〜数十曲しか曲を持ち運べなかった携帯音楽プレーヤーを、一気に約千曲という膨大な量を持ち運ぶことを可能にすることで、自分のよく聞く曲だけでなく、自分の音楽ライブラリを丸々持ち運ぶことを可能にし、それによって外で音楽を聞くという環境に新たな楽しみを生み出したところにあります。
自分のライブラリを丸々持ち出せる、ということは外出先で「あ、あの曲を聴きたいな」と思った時にすぐ聞くことができます。また、自分の音楽ライブラリをまるまるシャッフルして聞くことで、自分専用のラジオチャンネルを聞くようなスタイルで音楽を聞くこともできます。
これ、文章で読んだだけでは「ふーん」と思われるかもしれませんが、実際にそういう使い方をしてみると、音楽を聞くのが楽しくなりもっといろんな音楽を聴いてみたいという気分になります。実際にやってみないと分からないんです、これ。
このような意識の改革を促してくれるってのが、iPodが他の携帯音楽プレーヤーと違う大きな点だと思います。
「普段、同じ曲を繰り返して聞くだけだから」「そんなにたくさん曲が入ってもバッテリが持つ間に聞ける曲はその一部なんでしょ」とか言うのは、既存概念にとらわれてしまっている、言い換えれば、音楽を聞くという意識を改革できないために、新たな音楽との接し方を受け入れられないということなんではないでしょうか?
ソーシャルブックマークでの意識の改革
ソーシャルブックマークは、ネット上で多くの人々がブックマークを共有するしくみです。(このはてなにも、はてなブックマークというソーシャルブックマークサービスがあります)
これに対して、現在ネットを見るほとんど全ての人が使っているであろうブラウザのブックマーク(お気に入り)は自分が気に入ったサイトを自分のマシンのローカルに保存するというものです。
ソーシャルブックマークを知らない人が思うであろうところは「なぜ自分のお気に入りを共有する必要があるの?」「自分のお気に入りを人に見られるなんて嫌だ」というところでしょうか。
ソーシャルブックマークでは、自分が気になったサイト、記事を片っ端からブックマークしていくという使い方をします。普通のブックマークだと、そんなことをするとあっという間に整理しきれなくなるところですが、ソーシャルブックマークだとネット上にブックマークを保存するというのと、ブックマークするときにタグと呼ぶ分類のための印を付けることができるため、いくらたくさんブックマークしてもブラウザが重くなることはないし、タグをたどって後からブックマークしたサイトを見直すことも容易に出来ます。
そして、ここからが一番大事なところですが、みんながつけたブックマークの情報を共有することで、ある記事についてどれくらいの人が興味を持っているのか、どんな感想(コメント)を残しているのか、ということが分かるようになります。
逆の視点から見ると、多くの人がブックマークしている=みんなが興味を持っている記事というのが分かりますし、その記事についてみんなが思っていることをコメントから推察することもできます。
みんなが自分の興味のあること(ブックマークした記事)という情報を持ち寄ることで、多くの人々が見ている視点を集合し、それを分類、整理することで、ブックマーク利用者がそれぞれ記者となってニュースを集めてきた新聞のようなものを作り出せるのです。より多くの人が興味を持った話題は、ネット上でのその日の一面記事のトップニュースってことになります。
別に全てのブックマークをソーシャルブックマークでつける必要はなく、一つでも興味がある記事をブックマークするだけでも意味があります。人に見られたくない(知られたくない)記事をブックマークするなら、自分のブラウザで行えばいいのです。
ちょっと意識を変えてみると、いままでは不可能だった新しい体験をすることができる、これ、さっき述べたiPodの時の意識革命といっしょじゃないでしょうか?
新しいモノを受け入れる意識改革
上述の二つの例、どちらの場合もそうなのですが、過去の例にとらわれてしまって自分の意識を改革できなければ、新しい素晴らしい体験はできないのです。
新しいモノに対して「そんなことに意味はないよ」と言ってしまうのは簡単です。
でも、そう言った時点で新しいモノが作り出す新たな世界を体験する可能性を、自分でつぶしていることになります。
5.新しい現象に対し、「古い感覚を総動員した理論武装」で戦うな
梅田望夫さんのフォーサイトクラブ・セミナーの講演ログの一説ですが、ウェブ社会「大変化」に対応するための7原則のひとつとして、ここで述べたことと同様な内容のことを挙げられています。
上記リンク先の講演ログ、またそれに対する梅田さんの記事(■My Life Between Silicon Valley and Japan - 情報の伝播の新しさと、それを苦々しく思う人たちの存在)もこれからのネット社会を考える上で非常に参考になる記事ですので、是非読んでみてください。
このネット社会において出てくるさまざまな新商品、新サービスですが、過去のしがらみにとらわれず、どんどん試してみると面白いことに出会える確立もぐんと上がる、そんな気がします。