光メディア、ネット配信などのコンテンツ流通手段を巡る動きをみて


東芝HD DVD撤退関連の話題がニュースになってから数日経って、次世代DVD争いはBlu-rayの勝利で決着することがほぼ確定となりましたが、争いが終わったのは光メディア上での争いだけで、次は光メディア vs ネット配信の争いの時代に突入するんじゃないかと思っています。


映像というコンテンツを視聴者の元へと届ける手段として、この先何が主流になるのかは、さまざまなコンテンツを楽しむ視聴者として非常に興味のある話題ですが、以前のビデオ規格でのVHSとβの争い、今回のHD DVDBlu-rayの争いという同種メディア間での争いと違って、異種格闘技戦のようにも見える光メディアとネット配信の争いとなると、どちらが勝つかを決める要素がより多岐に渡るため、どっちが将来的に主流になっているのか、それともうまく共存していく形になるのかは予想しにくい部分が大きい。


光メディアとネット配信それぞれの比較


映像コンテンツを手に入れる手段として光メディア(Blu-ray)とネット配信を考えるときに、それを使うユーザー側として考慮する点は以下のようなものが挙げられます。

  • 映像コンテンツのクオリティ

現状では光メディア側の方が高いが、ネット配信もHD映像の配信に対応しつつある。どちらの場合においても、HD映像を堪能するためには、再生する環境・プレーヤー(ネット配信の場合は再生可能PCか)の両方を揃えなくてはならず、その普及率という点ではまだ両者とも低い。

  • 入手しやすさ

光メディア側の入手しやすさは今のDVDの延長線上となるだろうが、DVDからBlu-rayへとどう移行していくかが大きな鍵になりそう。ネット映像配信は音楽配信と比べるとまだ対応サービスが少なくHD映像対応ともなるとAppleのサービスが始まったばかりな状態。

両者ともコンテンツのラインナップが揃うのには今しばらくの時間を必要としそうだが、ラインナップが同じ様に揃った状態だとネット配信の方が入手のしやすさは高い。今回のHD DVD vs Blu-rayの争いに決着を付けたのがコンテンツ業界の動きだったように、光メディアとネット配信の争いでもコンテンツ業界の動きは大きな役割を果たしそう。

そして、購入かレンタルか、という視聴スタイルの選択も今後の争点になりそう。光メディアでは購入先行で、レンタルはこれからという動きに対して、ネット配信ではHD映像においてはレンタル先行、購入はまだその動きはなし。

  • 利便性

他の再生環境、例えば携帯動画プレーヤーなどに移して再生可能なのか、という部分も両者の間で大きな違いとなりそうな予感。ユーザーはもちろん高い利便性を望むが、コンテンツホルダーがどこまでそれを許容するか。

  • 価格

現在出始めのBlu-rayソフト、始まったばかりのHD映像ネット配信、そのどちらもDVDやSD映像ネット配信と比べると若干高めな料金で差別化されている。ただ、今後大きな普及期に入ってくると当然値下げの動きも出てくるはずで、どのタイミングでそのカードを切ってくるか、互いの動向が大きな鍵を握りそう。(劣勢側は早く値下げカードを使いたがるだろうが、コンテンツホルダーの意向もあるので、そう簡単には動かないかもしれない)


ユーザーが果たしてハイビジョン映像を望んでいるのかという問題


ハイビジョン映像を実際に目にすると、いままでのDVD画質までの映像との違いは明らかで、映像の品質という点では確かに差はあるのですが、ゲーム市場で高性能・ハイビジョン映像を売りにしているPS3Xbox360が必ずしも売れている訳ではないのを見ても分かるように、市場的にそれほどハイビジョン映像は望まれていないのではないか?という問題があります。

これは、ハイビジョン映像を見るために必要な機器を揃えるための投資額がかなり高く、再生環境を用意できない人がまだまだ多いこと、ある一定以上のクオリティを望まない人の存在、などが理由として考えられ、かつてビデオ→DVDと変化してきたときの様にうまく移行できるかというのは怪しい雰囲気が漂っています。


動画共有サイトの存在


またネット配信側で言えば、動画共有サイトが大きな競争相手となるという点もあります。まじめにネット配信に進出しようとするならば、動画共有サイトでの違法コンテンツアップロードの取り扱いは重要な課題となります。考えようによっては、これをうまく取り込んで公式ネット配信化することができれば、大きな弾みがつくチャンスになるかもしれません。


コンテンツ再生環境の展望


音楽にせよ、映像にせよ、それがデータである以上、流通のコストが安いネット配信へと移行していくのは時代の流れでしょうし、ユーザー側の利便性を考えても、過去のコンテンツが入ったメディアをプレーヤーで再生するという形から、データサーバから自由な再生環境ですぐに自分の好きなコンテンツを再生できるという形になるのもまた時代の流れでしょう。


ただし、そのような再生環境に移行するためには、ユーザー側の再生環境への投資、ネットインフラ・PC環境などの発展・低価格・簡易化、コンテンツホルダー内でのコンテンツの取り扱いの変化などが必要であり、特に一番後者は特に日本においては大きな壁となって立ちはだかるでしょう。



ユーザーの望むものと、それを提供する側の提供するものとが一致しなければ、その分野は衰退へと向かうでしょう。とかくユーザーと提供側の対立が加熱し気味な最近ですが、どこかに落としどころを見つけて折り合っていくのか、泣き別れに終わってしまうのか、コンテンツの提供方法を巡る動きは今後も目が離せそうにありません。