今の所競っている現行据え置きゲーム機の今後


ゲーム業界のパラダイムシフトを宣言する任天堂のWii戦略 - 後藤弘茂のWeekly海外ニュース


ここ一年のゲーム業界の動きを見て一番勢いがあると思われるWiiについての記事から。

「間違えていたのはゲーム業界の常識の方だ。我々がDS/Wiiで成し遂げたのは、真のパラダイムシフトであり、それまでの常識は通用しない。DS/Wiiの成功は、短期的なブームではなく、WiiもDSもまだ伸びて行き、ユーザーも広がり続ける」。  任天堂のメッセージを意訳すると上のようになる。ゲーム業界に根強い、ニンテンドーDSWiiの成功は一過性のブームで、やがて失速するという観測に強く反発している。多くのゲーム業界人が、未だにDSとWiiの成功をパラダイムシフトにあると認識していないというのが、任天堂のポイントだ。

DSやWiiでいままでゲームをあまりプレイしなかった層やゲームから離れていた層を取り込んで大きな売り上げに結びついたのは、どんどんマニア向けになって業界自体が縮小しつつあったゲーム業界に大きなパラダイムシフトをもたらしたのは確か。

今回のE3では、任天堂はこうしたDS/Wiiパラダイムシフトの結果、何が起きたのかを説明した。ポイントは3つ。(1)ソフトウェアのロングテール(長期販売)化、(2)豪華なグラフィックスと洗練されたゲームだけではない方向性、(3)ゲームユーザー層の拡大。そして、その次のステップとして、DSとWiiでユーザーを飽きさせない、より熱中させる要素が重要だと認識を示した。

ここで上げられている3つのポイントについて考えてみると、

(1)ソフトウェアのロングテール(長期販売)化
発売前からそのゲームについて入念に調べて、発売と同時に一気に購入に走るゲーマーの購入スタイルと、口コミやテレビ・雑誌などの話題でじわじわと盛り上がって話題共有的に購入に至る一般層の購入スタイルの違いが出てる感じ。


(2)豪華なグラフィックスと洗練されたゲームだけではない方向性
ゲーム機は世代が変わるごとに大幅に性能向上し、それに伴ってより豪華なグラフィックスや洗練されたゲームが求められるようになってきたが、それによって増大する制作コストと次第にマニアック化して下がりつつある売り上げのバランスが取れなくなってきている。Wiiが目指したのは、豪華なグラフィックスなどは諦める代わりに新しいインターフェースや遊び方を導入していままでにないゲームを作り出すことで、いままでのゲームファンだけに留まらないより大きなマーケットを構築しようという方向。


(3)ゲームユーザー層の拡大
いままでゲームをプレイしてこなかった人達にもやってみたいと思わせる様な、入り込みやすいゲームによるゲームユーザー層の拡大。ただ、拡大というよりかは、ユーザー層の変化というのを感じる。長年ゲームをプレイしてきてるゲーマーにはWiiはあまり受けていないので。



任天堂が目指したゲーム性の方向転換による新規ユーザー層の開拓はかなり成功していると思う。ただ、一方で、そういう新規ユーザー層が喜んでプレイしたがる新規軸なゲームをリリースできているのは任天堂だけなんじゃないか?という点が気がかり。大きな売り上げを誇るタイトルはどれも任天堂製で、サードパーティーのタイトルで大ヒットした製品は?と言われると思い浮かばない辺りが如何にWiiゲームタイトルが任天堂一強状態になっているかを示している。

岩田氏は、昨年は、ゲームをする人としない人の、心理的なバリヤを破りたいと語った。1年後の現在では、「心理的バリヤは破られつつあると信じている」(岩田氏)という。その上で、任天堂は新しいパラダイムで次を目指すと説明する。それは、飽きさせないこと、プレイヤがゲームにもっと熱中できるようにすることだという。  岩田氏が、“熱中させること”を次のステップとして挙げたことは、任天堂がDSとWiiの戦略の弱点を認識していることを示している。コアゲーマーが中核を占めるPS3Xbox 360の場合は、ユーザーがアクティブにゲームを求め、伝統的な路線のゲームで充分に楽しむ。そのため、ユーザーを熱中させ続けることは、相対的に容易だ。

私自身もWiiを所有してて何タイトルかゲームを実際にプレイしている。そこで感じるのは、Wiiのゲームは今までゲームをしてこなかった人達を引き寄せるような分かりやすい楽しさは持ってるのだが、そこから先のゲームにのめり込む楽しさってのに欠けてる気がするということ。

パーティーゲームみたいにすぐにルールが分かって楽しめるミニゲームは楽しいが、逆にみんなでワイワイするって要素がないとすぐに飽きが来てしまう底の浅さを感じたりもする。


据え置きゲーム機の今後の展開


新規ユーザー層を大きく取り込んだWiiだが、任天堂以外で大ヒットするゲームがリリースされていないのが気がかり。リモコンコントローラーはいろんなプレイに使える可能性があって、グラフィックの豪華さとは違う意味でのゲームの進化の方向の可能性を持つが、現状では無理にリモコンコントローラーを使おうとして失敗してるタイトルもかなり目立つ。安易なWiiへの移植タイトルが連発されるとますますサードパーティーのタイトルが売れなくなる可能性もある。
また、任天堂がどんどんと追加ハードをリリースしてるのもちょっと心配の種。あまり追加ハードを連発するとそのハードでしか楽しめないようなタイトルに分散してしまう危険性アリ。



一人やネットプレイで熱中してのめり込むゲームが多いのはXbox360で、日本ではユーザー数こそ少ないが、ユーザー一人頭のゲーム購入タイトル数では間違いなく一番高そう。レースゲームや洋ゲーFPS、ネット対戦環境などXbox360が強いジャンルはいくつかあったが、今年後半以降は日本のRPGが一気にXbox360に集中してリリースされるという流れもある。海外での優勢でXbox360でもリリースされるタイトルが増加してきていて、ゲームの勢いではPS3よりも高い印象。



PS3はAV機器やマルチメディアビューワーとして優秀なのと、PS2の流れで本体をリプレースするのでPS3購入というスタイルはあるが、ゲーム自体の盛り上がりはあまり見られない。それでも着実に本体は売れている。ソニー自身もPS3に関しては長い目で成長を望むという方針になってるっぽいので、今後の成長もじわじわか。今後のゲームリリース予定が少し寂しいのが気になるところ。




現世代の据え置きゲーム機は、いままでのどこか一機種が一強になり勝利する構図とは違って、三ハードともそれぞれ違う特徴があって、少しずつずれたユーザー層を取り込んでいる。PS3Xbox360はユーザー層がかなりかぶっているが、Wiiは別のユーザー層。それぞれのハードごとの特徴をうまく出せれば、いままでの世代ではなかったゲーム機共存の可能性もあるのかもしれない。



また、いままでと違うのは、ゲーム機が当たり前にネットワークに接続されている時代になったことで、ゲームの体験版が自宅にいながらにして入手、体験できるようになったり、動画でゲームのデモを見る事ができたり、ゲームの出来や楽しさなどの情報がネットを通じてものすごい早さで広まることが上げられる。

結果、よく出来たタイトルは確実にヒットするし、いままでは埋もれていたような隠れた名作も発掘されて口コミで売れたりする。逆に出来が悪いタイトルやバグありなものは徹底的に叩かれ、売り上げは望めなくなる。いかにユーザーが望むものを作り上げるか、という点がいままでのゲーム以上に問われる時代になってきてるのが感じられる。