デジタルデータによるコンテンツ視聴はやはり物理媒体からは卒業したい

音楽CDのような「デジタル本」が欲しい - モジログ」「電子書籍には、ファミコンのようなわかりやすさが必要だ - モジログ」を読んで。

「音楽CDのような「デジタル本」が欲しい」ってのは、「何かしらの形ある入れ物」にデジタルデータが入った電子書籍が欲しいってことだそう。



電子書籍のメリットはこういう「何かしらの形ある入れ物」からの脱却だと思ってるので、自分的にはそういう要望は無いかな。でも、そういうのを望む人がいるだろうってのは想像がつく。形としてあれば安心できる、ってのは、それを購入するユーザー側、販売する出版社・取次・書店側の両方で望む人がいるんだろうなあ、って。


こういう「何かしらの形ある入れ物」に入った「デジタル本」ってのは、データ自体は電子書籍として販売するものと同じでいいだろうから、後はそれを「デジタル本」の形にするしくみがあればいいような気がする。

個別のコンテンツをあらかじめ保存した状態の「デジタル本」ってのは、紙が何かしらの保存媒体に置き換わっただけで、在庫やら品揃えやらで紙の本と同じ弱点(大量に在庫できない)を持ってしまうので、昔の任天堂ディスクシステムみたいに書店に専用ライターを用意して、注文されたらその場でデータ書き込んだ「デジタル本」を作成して販売ってのはどうだろう。これなら大量の在庫を持たずに済むし。



ただ、これを書きながらずっと感じてる、これは電子書籍の本来の姿ではないというのを。本来は電子書籍は専用サイトなりアプリなりで欲しい物を探し、ぽちっとクリックひとつで購入できて、すぐさま自分の端末にデータがダウンロードされるのが有るべき姿。更には、ちゃんと購入履歴が管理されて、いつでも自分のアカウントでは再ダウンロード可能とか。


分かりやすさの形

電子書籍には、ファミコンのようなわかりやすさが必要だと思う。電子書籍リーダーがファミコンのようになり、「デジタル本」のカセットみたいなものを買って、それを挿せば読めるというふうになれば、そこそこ売れるのではないか。PCやタブレットのわかりにくい操作はいっさい不要、というのが重要である。

電子書籍には、ファミコンのようなわかりやすさが必要だ - モジログ

分かりやすさが必要だと思うのは同感なんだけれど、それをファミコンのカセットのような形で実現する必要は無いと思う。それでは分かりやすさを得る代わりに物理的な制約も課されてしまうから。電子書籍ストアやリーダーをファミコンの操作並にすればいいだけ。ファミコンのカセットみたいなメタファーは、そういう形に慣れていた世代には分かりやすいけれども、じゃあそういう形でしか分かりやすさを実現できないのか?と言えばそうではないと思う。

ガラケーみたいな携帯電話の時代にはさっぱり何も使えなかったうちの母も、iPhoneにしたら必要最低限の操作はなんとか自力でできるようになりました。なにせアイコンクリックするだけで機能に到達できるってのが大きい。


使いにくさが爆発してる今の電子書籍


実際に使ってて思う、電子書籍に望むことってのは結構いろいろあって

  • 専用のアプリでしか読めない形式は不便すぎてイヤ
  • コンテンツにDRMをかけることで、将来に渡って再生可能であることを保証しなかったり、私的複製などを過度に制限してユーザーの利便性を大きく損なったりするのをやめてほしい
  • 書店サイト、アプリが乱立しすぎてて、更に購入したとこでしかコンテンツ管理できないとかが不便すぎる

などなど。


電子書籍のフォーマットをもっと統一されたパッケージ形式にして、購入したコンテンツや読むリーダーは自分で好きな物を選択できる、という形がユーザーには一番望ましいんだけど、まあ、そういう形式にできるのは、今までもこれからもユーザーが自分で自炊して取り込んだデータだけになりそう。


とかくDRMをかけないと販売する気は無いとか、紙媒体の書籍売上が下がると困るから電子書籍は出さない、遅れてリリースみたいな形を取る販売側の思惑が電子書籍普及を一番遅らせてる。


本当にPCじゃないとデータを満足に管理できないのか?


音楽や写真、映像、電子書籍など、さまざまなデータを個人所有し管理する時代になって、結局のところPCを使って管理するのが一番分かりやすく活用しやすいってのは、PCに馴染めない人々への参入障壁になっているというのは感じるところ。

デジカメで撮影した写真をメモリーカードに保存した状態そのままで保存し、フィルムよろしくどんどんメモリーカードを買い足していくって使い方なんかは物理的な保存メディアで扱う方が分かりやすくて、PCで管理するとか面倒、分からない、って人々がいることを示してる。



そういったユーザー所有のデータ管理を行うハードウェアもちらほらとは発売されてるけれども、いまいちヒットしないのは、やはり使いやすさの点で満足できる商品がまだ発売されていないから。タブレットスマートフォンが普及してPCの購入者が減っていくであろうこれからは、PCナシにユーザー所有のデジタルデータを管理できる何らかのハードウェア、もしくはクラウドを活用したしくみなんかは大きなチャンスがある分野だと思う。


一度知ってしまった便利さからは戻れない


いち早くPCでファイルを管理するのが普及した音楽ファイルなんかは、もう一枚一枚CD入れ替えたりしてた時代には絶対に戻れない。数千、数万曲の中からジャンル、アーティスト名、アルバム名で簡単に目的の曲を探しだしたり、好みの曲だけ集めてプレイリストを作成して再生したり、自分の好みの曲だけを自動で集めて再生したり、なんてのが、PCやiPodみたいなミュージックプレーヤー上で簡単に実現できている。

電子書籍もこれくらい楽に取り扱えるようになるといいんだけど、いかんせん制約が大きすぎて、まだまだ実現までの道のりは遠そう。



さまざまなコンテンツが、今までの何らかの媒体に保存されていた形式から、デジタルデータへと移行するためには「再生するための装置」「保存するための記憶媒体」「流通させるための保存形式」「データを配信するための通信速度」「コンテンツを管理するための方式」など、さまざまな項目がそれぞれ進化していく必要があるんですよね。

更に、実際にコンテンツを販売している側の思惑がそれらとは別に存在してて。ユーザーは何らかのコンテンツを視聴したいとは思っても、制約が大きすぎると途中で断念しちゃうし、使い勝手悪ければ続けて購入しようとは思わないだろうし、何よりも正規に販売されていないものを正規に手に入れる方法は存在し得ない。最後のは音楽のデータ配信で長らく痛感してた点。



デジタル以前と以後の両方が混在する時代に生きてる我々は、コンテンツ販売の形式が変わる度に何度も同じコンテンツを購入したり(ビデオ→DVD→Blu-rayとかね)、既に所有してる書籍をデジタルデータで購入したりと、一見無駄とも思えるような行動をしてたりします。そういう人達の人柱によって、コンテンツのあり方は進化していくんでしょう。